東大寺でお葬式できるの?『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』島田裕巳著

浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか
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“お寺“と名がつくものなら

どこでも「お葬式」をやってくれると

考えてしまう人は

私以外でも結構いるんじゃないかと

思います。

それだったら、

あの修学旅行などで

有名な奈良の東大寺でも

希望したら自分のお葬式を

やってくれないかと思いませんか?

しかし、東大寺はお寺ですが

「お葬式」はやっていません。

お墓すらないのです。

なぜお寺なのに

「お葬式」をしないのでしょう。

お葬式をしない「南都六宗」

「南都六宗」は

日本の仏教宗派の源流なのですが

この「南都六宗」のお寺では

お葬式は行っておらず

お墓もないのです。

奈良の東大寺もその「南都六宗」の

一つなのです。

「南都六宗」とは

南都六宗は宗派というよりは

“学派“としての性格が強く

“教団組織“という感じでは

なかったようです。

現代にある

興福寺、薬師寺、東大寺

唐招提寺、法隆寺などもそれに

含まれます。

有名どころでいうと

興福寺の末寺である清水寺も

それに含まれることになります。

今日の仏教では宗派の違いで

教えが違い、それぞれが宗派の教義に

したがって信仰していて

それらが混ざり合って

教え合うということは

ないのですが

このような宗派に分かれる前の

奈良時代では

異なる宗派を学び合う“学派“としての

“寺“でした。

檀家を持たない「南都六宗」の寺

南都六宗の宗派のあいだで

その思想に

根本的な違いがあったとしても

学び合う「兼学」が基本であったため

一つの寺でもっぱら一つの学派が

研鑽され

教団組織となっていくことには

なりませんでした。

しかも、

飛鳥時代から奈良時代にかけて

創建された寺のなかで

規模の大きいものは、国の経費で

経営される「官寺」であったし

豪族などが氏寺として建てた

“私寺“に対しても

その経営を支えるために

国から墾田が与えられ

官寺に準ずる地位が与えられていました。

このような「国家仏教」は

国家というスポンサーが

寺の経済を支える体制が確立されていて

独自に経済基盤を確立していく

必要がなかったのです。

こういう点からも

宗派を形成する必要が生まれなかったと

著者は言っています。

南都六宗の寺院では

国家による支えがある以上

経済的に支援してもらう檀家を

もつ必要がなかったのです。

しっかりと宗派が確立されてきた近世以降、

寺院が葬儀を司ることで

「葬式仏教化」していく中で

今日でも南都六宗の寺院は

檀家のための墓地を設けず、

葬儀を営むことがないのは

かつての名残なのです。

現在でも、

南都六宗の寺院で僧侶が亡くなっても

その寺の僧侶が葬儀を営むことはなく

他の宗派の僧侶に依頼されるし

僧侶の墓もそうした菩提寺の中に

設けられているそうです。

このように

南都六宗の寺である「東大寺」もまた

今日まで葬式したり、

敷地に墓地を設けたりしていないのです。

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