働くの意味「他者からのアテンション」『悩む力』姜尚中著

悩む力悩む力
スポンサーリンク

なぜ、人は働くのでしょうか?

もちろん、生活していくためには

お金が必要だからですし

地位や名誉を得たいからと

いう人もいるかもしれません。

「お金があったら働かない」と

思っている人が

どれだけいるでしょうか?

しかし、

もう一生分のお金を手に入れた人や

資産を受け継ぎ、

お金の心配のいらない人も

その

年齢層にあった

仕事をしているケースが

ほとんどでしょう。

では、一体何のために

人は働くのでしょうか?

本書でそのことについて

著者の考えが書かれています。

仕事をしていないと一人前ではない

本書ではある資産家の息子さんの話を

例にあげて書いてあります。

一生困らないだけの遺産を受け取った

息子はそのおかげで

四十歳になるまで

仕事ではない学問の研究をして

暮らしていましいた。

羨ましい限りの境遇ですが

その息子はずっとコンプレックスを

抱いていました。

「自分は一人前ではない」と

思っているのです。

この息子は、「働いていない」ことが

心に重圧がかかっている

ことだったようです。

よく似たことで

専業主婦も

外で働いている人と違い、

「奥さん」「お母さん」と言われ

自分の名前を呼ばれることが

少ないため

やはり、「一人前でない」ような

気分になるようです。

生活のための仕事をしない高等遊民

十九世紀末の頃の資本主義の初期では

「どのような仕事であっても尊い」

とされましたが

その理想はだんだんと崩れ、

合理性と効率性を重んじた

無感動に働くワーキング・マシン化した

労働によって

いわゆる“成金“と呼ばれる人たちが

登場し始めると

「生活のために働くのは卑しいことだ」

と言い始める高等な教育を受け

優秀な頭脳をもった

ブルジュアの若者たちが

“高等遊民“となり、仕事もしないで

親にパラサイトして暮らす者も

現れました。

しかし、たとえ知的であっても

それでは暮らしてはいけず

大抵の人はお金の苦労にまみれて

現実的な労働者になっていくのです。

それを「一人前になる」ということなら

これも一つ“大人になる“ために

働くということになるのでしょう。

著者はこの頃の教育は

「将来、国家のために有益な働きをする

 人間を作る」ためのものだったのに

教育を受けたものに

逆に労働意欲がなくなってしまって

いることから、この頃の教育の失敗も

指摘しています。

「他者からのアテンション」

一部の人を除けば

「食べてはいける資産を持っていようと

 いまいと、やっぱり働くべきだ」と

思っています。

では、「働く」ということの意味は

何なのでしょうか?

ここで、三十代のホームレスの男性の

例をあげています。

その男性は、公園で寝泊まりし

ゴミ箱から週刊誌を拾って売って

命を繋いでいましたが

市役所の職員から

道路の清掃の仕事をもらうようになり

彼から色々話を聞いてみると

涙を流したそうです。

彼は、働いている時に人から

声をかけられたことで

人間らしい感情が戻ってきたと

いうことなのです。

多分「ご苦労様」などの

“ねぎらいの言葉“だったのでは

ないかと

著者は推測しています。

著者はここに「人が働く」という

行為の意味があるのではないかと

記しています。

「社会の中で自分の存在を認められる」こと

社会というのは

基本的に見知らぬ者同士が集まった

集合体であり

そこで生きるためには

他者から何らかの形で仲間として

“承認“される必要があります。

その手段が「働くこと」ということ

なのだと著者は本書で言っています。

ねぎらいのまなざしを向けられること

社会の中での人間同士のつながりは

深い友情、恋人、家族関係などとは

違った面があります。

「相互承認」の関係には

違いないのですが

この場合、著者は

「アテンション

 (ねぎらいのまなざしを向けること)」

という表現をしています。

清掃していた男性がもらった言葉は

この「アテンション」だったのでは

ないかということです。

そこで著者は

「人はなぜ働かなければならないのか」の

答えとして

「他者からのアテンション」

「他者へのアテンション」

と本書で言っています。

いわば、“相互アテンション“と

でも言いましょうか。

やりがいや夢の実現を仕事の意味に

するのは次の段階としています。

この「承認のまなざし」は

家族ではなく、

社会的な“他者“から与えられる必要が

あるということのようです。

現実社会の中で新しく輪として

繋がろうとした時

父や兄という家族との縁が切れる

そして、「一人前となる」という

なかなか練られた仕掛けだと

著者は示しています。

まとめます

「それだけお金があれば働かなくても

 いいのでは?」と

言いたくなるような人に限って

熱心に仕事に取り組んでいる人を

見る度に

何故なのかと不思議に思い

尋ねてみても意外と本人は

何故かわからないようで

有耶無耶な返事しか返ってこない

ようなことがあります。

もしかしたら、私も“お金“のために

働いていると思いながら

実は社会から

アテンションしてもらいたい欲求を

満たしたいからかもしれないと

考えて、

ひがむことなく

「どうせお金があっても働くんだ」と

淡々粛々と明日も仕事に励もうと

思いました。

悩む力
スポンサーリンク
スポンサーリンク
inuimieをフォローする
スポンサーリンク
ぽつのブログ

コメント