「情報通」は知的なのか インフォメーションとインテリジェンスの違い『悩む力』姜尚中著

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日常で「この人は知性がある」と

相手に思う時というのは

自分の知らないことを知っている人と

話をした時だと思いますが

本書では

“情報通“が「知性」なのかと

疑問を呈しています。

「知らない」と恥だと思ってしまう情報社会

ちょっと検索すれば瞬時にして

大体のことがわかってしまう現在は

情報が安易に手に入り洪水のように

溢れています。

そんな中で、

「××について知ってる?」と聞かれて

なかなか

「知らない」と答えるのを

過度に恥だと考えてしまいがちです。

情報の引き出しが多いと知的?

「そんなことも知らないの?」なんて

言われると

情報を手に入れることが

簡単になったのに、

それを怠っているようにも感じたり

取り残され感もあります。

なので

「××を知らないから何だ」とは

なかなか言えないのです。

informationとintelligence とは同じでない

「何でも知っている博学な人」は

素晴らしいです。

けれども、本書では

本来は、

「物知り」と「情報通」であると

いうことと、「知性」とは

別物とだと言っています。

例えば、パソコンの操作の得意な

小学生が機械の苦手なお父さんに

代わって旅行のプランを作ってあげる

として

即座に交通手段と宿と目的地の

情報を集めて

プリントアウトしてあげたからと

言って

この小学生がお父さんより

「知的」な人間かといえば

そうではないでしょう。

物事の原因と結果のいくつかの

パターンを「情報」として

蓄えているだけで

その知識には情熱も好奇心も

持ち合わしていないものであれば

自らの血肉になっているような

情報ならそれは知的と言えますが

服のポケットにたくさん紙片を

詰め込んでいるような知性なら

ただの「知ってるつもり」だけだと

著者は指摘しています。

知性とは科学なのか?

では、人間の知識とは

どういうものなのでしょうか?

人間の知性というのは

学識、教養といった要素に加え

協調性、道徳観といった要素を

併せ持った総合的なものを指す

と著者は言っています。

しかし、科学技術の発達とともに

それらが密接に関わるようになり

「知性」も分割され

ある部分だけが

肥大していくようになりました。

マックス・ウェーバーの知性の分析

科学技術をはじめとする

“文明“の発達が

「知性」を一面化し合理的に

捉えるようになり

以前のような総合的な調和をとる

ような「知性」の獲得は

断念にせざるを得ないという

結果になったようです。

ウェーバーは言っています。

われわれはみな電車の乗り方を

知っていて、

何の疑問も持たずに

それに乗って目的地に

行くけれども、

車両がどのようなメカニズムで

動いているのか知っている人は

ほとんどいない。

しかし、

未開の社会の人間は、

自分たちが使っている道具について

われわれより

はるかに知悉している。

したがって、主知化や合理化は

われわれが生きるうえで

自分の生活についての

知識をふやしてくれている

わけではないのだ。

「職業としての学問」マックス・ウェーバー

患者の延命のみに努力する医師

高度に科学が進んだ医学についても

こう指摘しています。

医者は

手段を尽くして患者の病気を治し

生命を維持することのみに

努力を傾ける。

たとえその患者が苦痛からの

解放を望んでいても

患者の家族もそれを望んでいても

患者が治療だいが払えない貧しい人で

あっても関係ない。

すなわち、科学はその行為の

究極的、本来的な意味について

何も答えない。

『職業としての学問』マックス・ウェーバー

このように科学は何を成すべきか

について何も教えてくれないし

人間の行為が元々持っていた

大切な意味もどんどん奪っていくと

本書では近年の「知性」についての

科学的根拠のみの裏付けについて

疑問を呈しています。

まとめます

文明が進歩した近年の「知性」とは

情報のパターンを覚え

垂れ流しすることであったり

科学的な根拠の一面だけを

合理的に捉えたものを

そう呼んでいる風潮があると

本書では指摘されています。

本来の「知性」とは一面性のものでは

なく、学識、教養とともに

協調性や道徳観と言った要素も

併せ持ったもので

ただ、一面だけで推し進めていく

科学や文明はかえって

本来、何をすべきかを失わせる

物となり、

「知性」と呼ぶには

程遠いものとなってしまって

いるのです。

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