【感想】①乳房から茶に乳を注ぐ光景『金閣寺』三島由紀夫著

金閣寺金閣寺
スポンサーリンク

1950年に起きた

金閣寺放火事件をベースに書かれた

三島由紀夫の作品。

金閣寺の美しさと凡庸さを

人間の中にも見出し

同化させていき

挙句の果てには

金閣寺を燃やしてしまうのです。

有為子という美しい娘

最終的には金閣寺を焼いてしまう

この小説の中の主人公は

「溝口」という男。

寺の息子で将来は住職になることに

なる中学生の時です。

有為子(ういこ)という美しい娘

に出逢います。

家が金持ちのせいもあるが

権柄ずくな態度をとる。

みんなにちやほやされるにも

かかわらず、

一人ぼっちで、何を考えているか

わからないところがあった。

金閣寺 三島由紀夫

まあ、

クールビューティーな感じとでも

言うのでしょうか?

そんな

娘に妄想を抱くほど憧れるのです。

そして、とうとう待ち伏せをして

してしまいます。

娘の前にいきなり現れた溝口は

「何よ。へんな真似をして。

 吃りのくせに」と罵られた挙句

叔父の近所の娘だったので

言いつけられ、叔父が家に来て

溝口がこっ酷く叱られることに

なります。

それで激怒していた溝口なのですが

海軍病院の特定看護婦だった有為子は

脱走兵と親しくなり妊娠し

病院をクビになったばかりか

憲兵に捕まることとなった。

その時の

有為子の狂気に満ちた様子を

溝口はこう語ります。

私は今まであれほど

拒否にあふれた顔を見たことがない

私は自分の顔を

世界から拒まれた顔だと

思っている。

しかるに

有為子の顔は世界を拒んでいた。

月の光りは

その額や目や鼻筋や頬の上を

容赦なく流れていたが

不動の顔はただその光りに

洗われていた。

一寸目を動かし、一寸口を動かせば

彼女が拒もうとしている

世界は、それを合図に

そこから雪崩れこんでくるだろう。

金閣寺 三島由紀夫

この“世界に拒まれている自分の顔“

“世界を拒んでいる彼女の顔“と言う

表現が面白い。

硬い文学作品なのにギャグっぽい😆

私は有為子の顔がこんな美しかった

瞬間は

彼女の生涯にも、

それを見ている私の生涯にも、

二度とあるまいと思わずには

いられなかった。

金閣寺 三島由紀夫

そして、憲兵に問い詰められ

脱走兵を捕まえる囮とされた

有為子は脱走兵のいる方角を指刺すのです。

有為子の美しさを見ながら

自分と関係を持った脱走兵を

裏切る醜い様子は溝口に

有為子が我が物になったと錯覚を

起こさせます。

しかし、土壇場で有為子は脱走兵を

庇ったので溝口は

身震いを覚え凍えるのでした。

乳房からお茶に乳を注ぐ美しい娘

ある信じがたい光景を

友人の鶴川と目撃する。

休日に南禅寺を訪れる。

そしてそこで緋毛氈の上に一人の

派手な振袖をきた

美しい女が座っていた。

そこに軍服を着た陸軍士官が

礼儀正しく女の前に座り

女は自ら運んできたお薄(抹茶)を

その男に勧めるがそのお茶を飲まない。

その間はすごく長い時間だった。

その間、女は項垂れています。

そして、とうとう信じられない

光景を溝口は鶴川と見ることに

なります。

なんと、着物を緩め乳房を出し

その士官が捧げ持った茶碗に

乳を注いだのである。

それは士官の子供を妊娠した女と

出陣する士官との、

別れの儀式であったようなのです。

それに

感動しながら溝口は思いました。

そして、

その女が立ち去ったあとでは

その1日の残りの時間も

あくる日も、又次の日も、

私は執拗に思うのであった。

たしかにあの女は、

よみがえった有為子その人だと。

金閣寺 三島由紀夫

この強烈な場面で

有為子を思い出しています。

溝口にとって有為子は

美しさと滑稽で醜いことが一体と

なったものが女であるという

イメージなのでしょうか。

まとめます

『金閣寺』は表題からすれば

硬いお話のようですが

なぜか、男女の欲情のような

表現が多く出てきます。

少し、男性向きのような話の

ようですが

事件を起こしたのが

若い青年ということもあって

著者はそうゆうことが

つきまとっていたとする方が

リアル感があると思ったのでしょうか。

「美しいもの」でいて「醜いもの」

悲しいようですが

人間を描くと

このような対比がどうしても

つきまとうように思います。

“美“や些細な感情の揺れの

表現が巧みで

感動を覚えます。

この有為子への思いが

この話の始まりでここから

また読み進めたいと思います。

そして、最終的には

金閣寺を燃やすに至るのです。

金閣寺
スポンサーリンク
スポンサーリンク
inuimieをフォローする
スポンサーリンク
ぽつのブログ

コメント