全体的にはインフルエンザや普通の風邪に
似ていますが
やはりこれだけの罹患者がでた
“新型“だけあって
その違いが最近ではわかってきたようです。
その特徴をわかりやすく説明されている
2021年8月20日発行され、
最新の情報が満載した
本書を紹介します。
インフルエンザとの違い
インフルエンザをはるかに超える感染力
まずは、その感染力が違います。
パンデミック発生以来、
大勢の人がマスクをして
手洗いをし頻回なアルコール消毒をして
感染予防をしていたせいなのか
2020年秋〜2021年春にかけて
インフルエンザで受診した人の数は
1万4000人にとどまりました。
例年ではインフルエンザ感染者は
1000万人と言われているので
1000分の1になっていると
いうことです。
メディアでは、
「インフルなくなる?」とまで
噂されるのも納得できる数字だと
思います。
例年であれば感染力の強い
インフルエンザを
これほど封じ込めるほどの予防策を
強いているにもかかわらず
この新型コロナはいっこうに
収まる気配がありません。
強力な感染を生み出す「ステルス性」ウィルス
新型コロナウィルスの強力な感染力を
生み出した理由は
このウィルスの「ステルス性」だと
著者は言っています。
英語で「密やかに」「こっそり」とかという
意味ですが
その潜伏期間の長さに驚きます。
最長で14日と長く
平均では5日目が一番発病する人が
多いようです。
インフルエンザの潜伏期間が
1〜2日間ですから
その潜伏期間の長さは際立ちます。
しかも、発病してからウィルスの排出量が
ピークになるのは(人にうつす)
インフルエンザなら2〜3日後、
新型コロナなら症状が現れたその日が
最大になるというのです。
症状が出ると人はみな
自主的に安静隔離していくのが
普通なので
隔離した状態でウィルスの排出量が
最大になるインフルエンザに比べて
新型コロナの方がピークが早い分、
他人に感染させることが
多いということになります。
そして、これまでの研究で
新型コロナウィルスは発病3日前から
他者に感染させるのに
十分なウィルス量を放出していることも
わかったようです。
また、ほとんどの二次感染は
発症5日までに起こっていることから
コロナ患者は感染してから
一週間にわたって感染させる危険が
あるということです。
PCR検査の有効性
例えば、症状が出る前に
(できれば、症状が出る3日前)に
感染を確認できれば
感染の拡大が防げるのにと
思った場合に、
新型コロナの感染を知る手立てとして
遺伝子レベルで検出できる
“PCR法“を用いて、
感染の可能性のある人たちを
スクリーニングできたとした時の
その有効性も本書では書かれています。
その陽性率は
発症三日前にはほとんど検出されず、
発症日で62%、
発症から3日目で82%とかなりの
“取りこぼし感“があります。
検査には抗原検査と違い
早ければ半日、長ければ2日かかる
こともあるので
なおさら、
予防には使える気がしません。
そして、発症7日までに感染力が
大幅に低下しているにもかかわらず
PCR検査陽性率は
30〜40%があり
隔離解除10日目であっても
PCR検査の陽性が続きます。
多くの医療機関はPCR検査が陰性に
なることを退院の条件としていたことで
感染力がほとんどない患者も
留め置かなくてはならなかったことも
医療逼迫の原因になったのではないかと
著者は言っています。
そのため、
現在では症状の改善と10日を目安に
退院、隔離解除が行われていて
PCR検査が必ず陰性でなければ
ならないという条件は
緩められているそうです。
大量のウィルスを散らす「スーパースプレッダー」
政府のクラスター対策を担当された
押谷仁教授により
感染者の8割は誰にもうつさないにも
かかわらず、
残りたった2割の人が複数の人に
感染されているというということが
言われました。
この1人で多くの人を
感染させる能力のある患者を
「スーパースプレッダー」と
いうそうです。
MIT(マサチューセッツ工科大学)の
研究によると
新型コロナの「スーパースプレッダー」に
なりやすい要因として
「年齢」「BMI」「感染の経過」が
あげられています。
「高齢でBMIが高いほど呼気に含まれる
呼吸器飛沫の数が多い傾向がある」と
いうことです。
このスーパースプレッダーについては
まだ、詳細がわかっていませんが
このような患者を早く見つけることが
できれば
感染拡大の勢いを止めることが
可能になるとしています。
年齢別にみる重症度
厚生労働省のデータでは
30代の重症度を1倍として
10歳未満で0.5倍
10歳代で0.2倍
20歳代で0.3倍
なのに対して
50歳代で10倍
60歳代で25倍
70歳代で47倍
80歳代で71倍
とどんどん上がっています。
これはインフルエンザの死亡率より
何十倍も高くなっています。
このように重症化しやすい
高齢者は症状も激しいことから
無症状が多い若い人よりも
必然的に飛沫量も多くなり
感染力も高齢ほど強いというのも
わかります。
細胞侵入にかかる時間はわずか10分
なんて早いのでしょう。
飛沫を受けて、家に帰ってから
それを拭うなり消毒しても
このスピードでは間に合う気がしません。
それは、病原体を食い止める仕組みが
うまく働かなくなるのも
このウィルスの特徴であるからと
著者は言っています。
I型インターフェロンと呼ばれる
それがウィルスの“炎上“を止める働きを
するのですが
それがうまく働かず、
感染が周囲の細胞に広がっていきます。
体内に侵入した新型コロナウイルスが
取り付く先は
気道のほか、肺胞、腸管に多くあります。
個人差で言えば
口腔、鼻腔、血管、脂肪にも
あるそうです。
なので、感染すると全身に炎症が起こり
全身の痛みだけではなく
全身症状を悪化させます。
一度感染が始まると
一個のウィルスが10時間後には
1000個のウィルス粒子になり
細胞外へ放たれます。
その一個が10時間後にまた1000個になり
“鼠算的“に増えていきます。
もう、止められない速さと言えるでしょう。
基礎疾患があるとなぜ重症化するの?
ワクチン接種の優先順位として
高齢者があげられていたのは
先程の説明のように
I型インターフェロンの産生能力が抑えられるため
ただでさえ、
その産生が衰えている高齢者では
より重篤化してしまうことは
承知できました。
では、
同じように優先的にあげられていた
“基礎疾患がある人“の場合はどうなのでしょう。
慢性閉塞性肺疾患、慢性腎炎、糖尿、高血圧
心血管疾患、肥満(BMI30以上)
これらの人の疾患の特徴は
「慢性炎症」です。
これらの疾患は常に体に弱い炎症を
起こしていて
それにより「サイトカイン」という
物質がたくさん作られています。
このように感染前から既に“小火“が
起こっている状態で
新型コロナウィルスが侵入すると
「大火事」状態になり
重篤化していきます。
サイトカインの嵐が起こるのです。
そのサイトカインが細胞を傷つけて
言ってしまいます。
過剰な免疫反応に歯止めがかからなく
なってしまいます。
ただし、持病があっても
きちんと治療してコントロールされていれば
大きなリスクにはならないと
著者は言っています。
最も有効対策はやはりワクチン?
現在、新型コロナウィルスを標的にする
医薬品の開発が進められていますが
現時点では
症状悪化を食い止める薬はあるものの
病気を根治させる特効薬は
ない状態です。
それゆえに
まだ、わからないところもある
ワクチン接種が今のところ
最も有効であると著者は言っています。
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