生まれ育ちや家柄、
学歴や地元意識などそれら
“同じ世界の住人“
同士の結婚を望みやっとの思いで見つけた男性
幸一郎と結婚したはずなのに、
慰謝料を払ってまで離婚をしまったのが
本書に出てくる
華子というお嬢様でした。
完璧なのに恋愛感情にならない男
見た目もいいし、
ちゃらちゃらしていない
お家柄が整った高学歴の貴公子、
それをひけらかすことなく
感じもいい、
優しくて最高の条件の男性なのに
本書の登場女性ら(婚約者、恋人)は
この男性(幸一郎)に対して
どうしてか、切ないほどの
「恋愛感情」が湧いてきません。
悪気も計算もない“貴族の華子“
今までにない条件のピッタリな男性である
幸一郎との結婚に対して
なぜか華子(婚約者)は
友達に不安な気持ちを
吐露しています。
「…心が…あまり感じられないところ
…かもしれません。
心がないわけじゃないけれど。
なんていうか、適温だから居心地はいいけれど
長居するとすっごく底冷えする部屋みたいな
そんな感じで」
『あの子は貴族』山内マリコ著
華子は家は開業医であり
地元では有名な名家であったし
学校もカトリック系の女子校で
仕事につくが早々に退職しお見合いの日々。
お付き合い=結婚と考えてしまうタイプ
なので
初めから自分の条件にあった
相手に対して好意を無意識に
決してモテないタイプではない華子で
持ってしまうのです。
決してモテないタイプではない
華子であっても
恋愛となるとその姿勢が
相手を
引き気味にさせてしまいます。
親が喜んでくれる条件=恋愛と
思ってしまうところがあったのです。
なので
最終的には「こんなものか」と
思ってしまうのが
悪気も計算もない“貴族“の華子だったのです。
しかし、
男性に対して自分を合わせることなく
自由に生きている苦労人の美紀や
自分の仕事に一生懸命な同じお嬢様の
相楽さんの話を聞いて
このことに疑問を抱き始めたのです。
幸一郎さんは悪くない?
広義の「釣った魚に餌をやらない」タイプの
幸一郎なのですが
離婚して一年後再開した時には
華子に対して気さくに話かけます。
その時初めて自分の気持ちを
幸一郎にぶつけることができました。
付き合っている時から
そうできていたら
離婚せずに済んだかもしれません。
しかし、幸一郎は
思い通りにならないサバイバーな
恋人ではなく
従順で文句も言わず耐え忍び
面倒な家のことをやったり
見返りなく
夫にひたすら尽くすのを美徳とする女性を
選んで結婚したのですから
本音でぶつかっていたら
結婚していなかったかもしれません。
離婚は地位のある幸一郎には
とても痛手であり
華子にとっても幸一郎の家や実家から
罵倒され
散々なものでした。
しかし、物語が離婚で終わらず
再会まで描いているのには
幸一郎は特別な男性ではなく
一般的な男性であることを
言いたかったかもしれません。
結婚は条件として
華子は幸一郎のような男性を
必死に探していましたが
世の女性は皆、
実は釣った魚にちゃんとケアできる
男性を必死に探しているのです。
それは“貴族“も“庶民“も女なら
誰もが望む条件なのです。
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