生活保護で貧困は無くならない『不愉快なことには理由がある』橘玲著

不愉快なことには理由がある不都合なことには理由がある
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長い不況とコロナ禍で

収入が減り、生活が立ち行かなくなり

「生活保護」を受ける人は多くなったと

思いますが

著者は「生活保護」では

貧しい暮らしは改善されないと言っています。

それは一体、

なぜなのでしょう?

「生活保護で貧困は無くならない」

生活保護にかかる費用3兆円越え

生活保護の受給者が200万人を超えて

戦後の混乱期(1950年)に

制度が創設されて以来の

最多水準に達しているようです。

生活保護にかかる経費は3兆4000億を超え

自治体の負担も大きく

このままでは制度自体が崩壊してしまう

可能性があるということです。

「自力で生きていけない貧しい人たち」を

いかに救済するかは

どこの国でも考えなくては

いけない問題なのですが

著者は本書で

ノーベル平和賞を受賞している

ムハマド・ユヌスの意見を紹介しています。

“貧者の銀行“「グラミン銀行」

バングラデシュの経済学者ユヌスは

“貧者の銀行“と呼ばれるグラミン銀行を

創設し

貧困の改善に大きな功績を残しました。

バングラデシュは世界でも最も

貧しい国で知られており

旱魃や洪水などの自然災害で

何十万人ものひとが餓死しています。

国民の半分は読み書きができず、

一人当たりのGDPは約700ドルで

日本の65分の1程度の経済状態です。

ユヌスはこの絶望的な貧困と戦うために

マイクロクレジットという

独創的な融資制度を考案しました。

マイクロクレジットとは

① 事業資金を与えるのではなく

 利息(年利10〜20%)をとって貸し付ける。

② 借り手を五人ひと組にして、

 連帯負担で返済させる。

と言ったもので

これが

従来の援助の常識に反するこの仕組みは

98%の返済率でビジネスとして

成立しただけでなく、

融資を受けて自営業を始めた借り手たちの

生活を大きく改善していったのです。

人間の尊厳を守る金融対策

マイクロクレジットが成功した理由は

グラミン銀行の主な顧客は

男尊女卑の伝統的な文化の中で

人間性を奪われた農村の女性たちでした。

その境遇が可哀想だからと言って

施しを与えても、

相手の尊厳を踏みにじるだけで

収入を得ようとする意欲はわかないのです。

グラミンの顧客たちは

「働いても稼いだお金から返済する」ことで

生まれて初めて

“自尊心“を得ることができ

意欲が湧いてくるのです。

そんな彼女たちの悩みは

男尊女卑の風習から

妻がこれらで得たお金を夫が

取り上げてしまうということだったのです。

こうなれば、家族の中で

そのことを非難する人がいないので

まかり通ってしまいます。

しかし、これは②の“連帯責任“で

カバーされます。

なぜなら、こんなことになれば

連帯責任を負う「五人組」が困るからです。

1人でも返済が遅れると

残りを四人で引き受けなくてはなりません。

彼女たちは取り上げた夫に対して

猛然と抗議することによって

夫に収入を奪われることがなくなった

ということです。

連帯責任は相互監視だけでなく

孤立していた女性たちの助け合いをも

可能にしたということです。

「貧困に途上国も先進国もない」と主張

ユヌスは

「先進国でも途上国でも貧困は同じ」と

言っています。

シカゴのスラムでユヌスが見たのは

生活保護に依存して

自尊心を失い、家族や友人もなく

社会的に孤立した

バングラデシュと全く同じ人たちでした。

援助によって途上国の貧困が

改善できなかったように

生活保護の貧困がなくならないのも

当然のことなのです。

こうしてユヌスは先進国の政策担当者に

マイクロクレジットを導入するよう

提言しています。

世界の偉人の中で、

ユヌスほど貧困について真剣に考え

実践した人物はいないでしょう。

しかし、不思議なことに

日本を含め、ユヌスの言葉に耳を傾ける

「豊かな国」はどこのもないのです。

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