⑤刃物恐怖症少年とリストカット少女『ここは今から倫理です』ひずき優著

ここは今から倫理ですここは今から倫理です
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この相対することが

お互いを救うことになる。

そこには「倫理観」はなく

あるのは“激情“だった。

教師は生徒が“正しく生きる“ために

導く存在であるが

時には邪魔でしかない時もある。

本書の主人公、高柳は

少し悔しく思い、ヤサクレます。

授業中にリストカットをする女子生徒

死にたいからじゃないんです。

スッキリするのです。

血を見たり、傷跡を触ったりするのは…

高柳の「倫理」の授業中

由梨は授業に飽きて

「倫理」の時間に

このような行動をするという

“背徳感“につき動かさせて

自分の手首をハサミの片方の刃で

すっとこすり切ります。

すっと、血は滲みましたが

それほど切ったわけではありません。

しかし、それを見た隣に座っていた

都幾川が“過換気“を起こして

叫び倒れ、保健室に運ばれます。

「倫理」も一瞬の“激情“には勝てない

由梨は都幾川に悪いことをしたと

思い、様子を見にいくと

都幾川は涙を浮かべながら

由梨が無事だったのを

心から喜び抱きしめます。

今までバレた時は

「止めろ」と迫られるばかりだった

人たちと違い

都幾川が偽善でも

常識を押し付けることもなく

手首の傷が増えていないことを

心から喜んでくれることが

由梨には嬉しかったのです。

そして、高柳は思います。

「半年以上かけて

 何度も何度も倫理について

 語りかけた。

 聞いてもらえるように、

 わかりやすいように、

 簡潔に…

 “正しいこと“が何なのか

 話し続けたけれど、

 それも一瞬の心揺さぶる

 “激情“には勝てない。

 どんなに人の心の理論を言っても

 必要のない人には聞こえない。

 私たちは彼らにとって要らない

 存在なんですよ。藤川先生

「ここは今から倫理です」ひずき優著

同僚の先生に冷めた言い方します。

教師や大人の無力さを知る

「リストカット」とはどんなものかは

知っている。

でも、由梨がしていたのは知らない。

「都幾川が極度の“刃物恐怖症“」ということは

知っている。

でも、その原因はわからない。

そして、高柳は藤川先生に断言します。

「教えてくれなければ

 一生わかりませんよ。

 我々は他人なのだから…」

「ここは今から倫理です」ひずき優著

その言い方に保健室の藤川先生は

「努力しなさいよ!」と言わんばかりに

反発しましたが

しかし、高柳先生が迂闊に踏み込まない

理由があるのです。

「今、彼らが戦うべきは

 “自分自身“。

 私たちが無理に入れ込んだら

 戦う相手が増えてしまう。

 私は腕を切りたいと思ったことも

 叫び出すほどの恐怖を目撃した

 こともないからわからない。」

 そんな私が彼らの過去を探ろものなら

 きっと私は彼らにとって最も

 憎い敵になる」

「ここは今から倫理です」ひずき優著

由梨は立ち聞きしていました。

そして、この高柳の態度は

由梨にとってはありがたいことでした。

しかし、冷めたように言う高柳は

本当は悔しいかったのです。

そのことが口調から読み取れた

由梨は高柳に対してもう仕訳ない

気持ちになるのです。

まとめます

高柳はいわゆる、

“心に問題を抱えた子にしか関心がない“

タイプの人間で自分でもその事は

「厄介だなあ」と思っています。

「倫理」の力を用いて無理に気持ちを

引き出すのではなく寄り添い

自分で乗り越える知恵を与えようと

します。

苦しみや悲しみを打ち明けることが

できれば、高柳だけではなく

いろんな周囲の人が助けてくれる

でしょう。

しかし、

多くはその深い悲しみや苦しみを

打ち明けられません。

その悲しみ、苦しみは時に

ぼやけて、形を伴わず

表現しにくいもののことが

多いからでしょう。

この生徒たちが大きくなって

よりよく生きるには

自分の悲しみや苦しみを自分で

消化していかなければなりません。

そんな時、その感情を形にし

表出できるか

もしくは、自分でセルフ・ケアできる

ようになるか

そのために高柳先生は毎日

「倫理」の授業を始めるのです。

ここは今から倫理です
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