①「あり得ない!」を持ってしまった大人たち『漂流教室』楳図かずお著

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漂流と聞くと“海“や“島“が

思い浮かびますが

この作品は

“小学校“が建物ごと漂流します。

そこは全てのものが滅んだ地球の

未来がありました。

その未来は果てしなく続く砂漠と

自然に帰らないビニールや化学物質、

汚染された空気

どんよりした空だけでした。

そして、その悪環境に適応した

未来の生き物が存在していました。

今の平和で豊な生活は未来には

続いておらず、

飛ばされた子供たちは

地獄のようなサバイバル生活を

強いられます。

その中で現代では得られないような

強さを身につけていきます。

本書を読んで今自分たちが

“未来“の子供たちに

何ができるか

考えていきたいと思います。

学校がタイムスリップしてしまう

地震と共に大和小学校は

建物とそこにいた人間ごと未来に

飛ばされてしまいました。

初めは地震が治ったと

授業を再開していましたが

校門の外や周囲は何もない薄暗い

砂漠の世界だということに

気がつきます。

そこで自分たちの名前が刻まれた

“慰霊碑“を見て

自分たちだけ未来に来てしまったと

いうことを自覚します。

大人の教師たちがパニックになる

初めは子供たちに動揺を与えないために

振る舞っていた教師たちが

この状況に耐えきれず、

暴力を振るったり、心臓発作を起こしたり

自殺したりと精神の異常をきたして

いきます。

そんな中、教師の若原は次々と残った

教師を殺害していきます。

若原は錯乱状態で自分で

殺意が止められません。

生きていくためには、生存人数を

間引いていかなければ

餓死してしまうと懸念したからです。

そして、子供を偵察だと校舎外に

何人が連れ出し、

車で轢き殺していきます。

子供たちはまさか先生に殺される

なんて思っても見ません。

それだけ大人や教師を信じて平和に

暮らしていた時代の子供達だった

のです。

現代に残された母親が我が子を助ける

子供たちの“リーダー“の翔は

先生に押さえ込まれもう後がない

状態になった時

「おかあさん助けて」と叫びます。

現代では狂ったように翔の無事を

祈る母親。

他の人が諦めようとも

必死に翔を探します。

ある日電話の声に翔のメッセージが

聞こえ(母親にしか聞こえない)

その声を頼りにホテルまでたどり着き

一室で翔を助けるべくナイフを壁に

埋め込みます。

すごいですよ。

ドリルを持ち込み穴を開けてしまいます。

翔がまさしくピンチの時

手で探るとそのナイフに触れ

先生を退治することができたのです。

おかあさんはこれから話が進むにつれ

未来に行ってしまった息子のために

エキセントリックに活躍していきます。

なぜ先生はみんな死んじゃったの?

翔は命からがら学校へ帰ってきます。

そして、

下級生たちに

先生はいなくなったことを伝え

自分たちで生きていこうと宣言します。

(給食屋のおじさんは生きていました)

一人の生徒は尋ねます。

「先生はどうして死んじゃったのですか?」

おとなの人はだいたいものごとを

りくつで考えるだろう。

だから、

りくつにあわないことが

おきたときに

あたまの中がめちゃめちゃに

なってしまって

たえられなくなって、

しまうからだと思う。

「漂流教室」楳図かずお著

確かに学校ごと未来に飛ばされる

ことなんて、

信じられない、受け止められない

状態だったのでしょう。

だって、

おとなの人はすぐ

“そんなこの世にありもしないことを“

ってすぐいうじゃないか。

おとなの人はもう自分のものさしが

できてしまっているんだ。

「漂流教室」楳図かずお著

では子供はどうでしょう。

でもぼくたちは、

まだいろんな可能性を考えることが

できる。

だからこうして、

生きていられるんだと思う。

でも、ぎゃくになんでも自由に

考えられるということは、

こんどの辰巳くんのように

迷信さえ

(こんなことが起こったのはよくない子が

 いたせいだ “た“のつくやつを火炙りに…)

信じてしまことになりかねない。

「漂流教室」楳図かずお著

母親との絆

翔は小学校の割にしっかりしています。

この作品が描かれたのは1970年代

なのでその頃の

小学生はこんなに大人びていたのでしょうか?

こんな大人顔負けな子ですが

ピンチには「おかあさん」と叫び

常におかあさんと心の中で

話をしています。

日頃、母親と衝突することが多く

「ババー」と言っていた少年でしたが

いざ、このような困難な局面では

二人の絆が伺える場面がたくさん

出てきます。

まとめます。

このような信じがたい

“りくつ“にあわないことが

起こると最初にダメになるのは

子供より案外大人の方なのでしょう。

特にここに出てくる教師は

想定外のことが起こると

対応できない“マニュアル教師“だった

ためか生徒の命どころか

自分の命ですら保つことが

できなかったのは

現代の大人たちに共通して

言えることかもしれません。

子供の時に持ち合わせていた

“柔軟“な心を

大人になっても持ち合わせて

いたいものです。

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