古代の情報処理システム『サピエンス全史』ユヴァン・ノア・ハラリ著

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狩猟採集社会から農耕民族となり

集団を管理する必要が出てきたのは

紀元前3500年ほど前のメソポタミア南部の

農業革命の起こった頃です。

この数を管理するのに現代のように

コンピュータもExcelもない時代に

どのようにしていたのでしょうか?

本書でそのことに触れた部分が

あるので紹介します。

古代のデータ処理システム

サピエンスが約7万年前から

認知革命(人として思考し始める)から

約1万2000年前の農業革命の開始に

当たって、著しく複雑な社会が

出現し始めると

情報の整理が必要となりました。

農耕以前の狩猟採取民では

食べる分だけとって食べるので

それほど、

取れたものや食べた量などの

管理が必要ではありませんでした。

しかし、集団生活の農耕民たちは

やがて大規模な国家を維持するために

数理的データが不可欠に

なってきました。

税を徴収するには

人々の所得や財産のデータや

なされた支払いついてのデータ

滞納者や負債、罰金についてのデータ

割引や控除についてのデータ

これらの情報が積み重なると

莫大な量となり

これらの数を全て記憶に頼るのには

限界がありました。

そして、数千年の間

国家はなかなか

大きく発展できませんでした。

古代の「エクセル」データ処理システム“書記“

紀元前3500年メソポタミア南部では

肥沃な泥だらけの平原に焼けつくような

日差しが降り注ぎ、

その土地で豊かな収穫をして

次々と町ができて栄えていきました。

住民の数が増えるにつれて

それらを調整するために

必要な情報を処理するために

名も知らぬシュメール人の天才が

脳の外で情報を保存して処理する

システムを開発しました。

このデータ処理システムを

「書記」と呼ばれるものです。

6に基づく記数法、10に基づく記数法

「書記」とは記号を使って

情報を保存する方法で

シュメール人の書体体系は

2種類の記号が使われ

それが粘土板に刻まれていました。

一方の記号の種類は数を表していて

1、10、60、600、3600

36000を表す記号がありました。

6に基づく彼らの記数法からは

現代の私たちにも使われている

1日を24時間に分割したり

円を360度に分割したりするのも

その例なのです。

もう一つは

動物や品物、領土、日付などを

表したものもあります。

シュメール人はこれらの記号を

組み合わして

人間の記憶やDNA鎖がコード化できるよりも

はるかに多くのデータを保存することが

できました。

「クシム」という署名

「書記」の出現とともに

歴史上初めて記録された

名前が紹介されています。

例えば、ネアンデルタール人や

ナトゥーフ人といった人類史で

使われていた名前などは、

近代以降に考えられたものですが

この「クシム」は

書記の最後のサインとして

実際書かれていた名前で

その名前は特に英雄の名前でもなく

ただの会計係だったということに

著者は意味を感じています。

アンデス書記体系「キープ」

シュメール人の発明した「書記」とは

違いますが帳簿のようなもので

アンデスの書記体系があります。

「書記」のように

粘土板に刻むものではなく

色のついた縄に結び目を作って

記する「キープ」というものでした。

一本一本の縄には

異なる場所に結び目が

作られいました。

何百本もの縄と何千もの結び目の

あるキープを作り

色の異なる縄と異なる場所の結び目を

組み合わせれば

例えば、税の徴収や財産の所有権に

関する多くの数理的データを

記録できました。

この「キープ」はインカ帝国の時代で

1000万〜1200万の人々のインカ人の

大量のデータを保存し

処理することができました。

この「キープ」がなければ

あれほどの規模の帝国

が必要とする

複雑な行政機構は維持できなかった

であろうと本書では書かれています。

古代帝国も帳簿の管理がしっかり

できないとあれだけの

大国にはなれなかったという

ことでしょう。

この「キープ」は正確でスペインが

南アメリカを征服した直後の年月には

スペイン人自身が自分たちの

新しい帝国を治めるのに

使ったほどなのです。

しかし、

この帝国の繁栄に導いた

素晴らしいデータ処理システムも

次第に廃止されるのです。

「書記」「キープ」が衰退した理由

それは、これを扱うには専門家で

なければならなかったのので

地元のキープの専門家は

支配者たちをいとも簡単に欺き

騙すことが多くなったからです。

支配者たちはこれでは

自分たちの立場が弱まると考え

複雑で専門家を介さなければならない

書記体系らは廃止され、

新しい帝国の記録は全て、

ラテン語の書記体系と数字で行なう

ようになりました。

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