【感想】本当に死ぬ理由だったのか? カラフル 森絵都著

カラフルカラフル
スポンサーリンク

死んだはずのぼくの魂が、ゆるゆると

どこか暗いところへ流されている

からはじまる物語。

中学校などの読書感想などの教材に

引っ張りだこの本書。

思春期の子供を持つ親御さんも読むと

親や周りの大人ではわからない子供の悩み

周りの人間関係にどう傷ついているのか

を理解するのに参考になる本です。

あらすじ

死んでしまった僕。魂が彷徨っていると

天使に出会います。

僕は生前の罪により輪廻のサイクルから外れて

しまったらしい。

でも天使業界の抽選にあたり

再挑戦のチャンスを与えられた。

具体的には、自殺を図った少年、

真の体に入って過ごし

僕の罪は何だったかを

思い出さなければならない。

真として過ごすうちに僕は

人の欠点や美点がしっかりと見える

ようになってくる。

それをヒントに自分の罪を思い出すべく

期限のある仮の「生」を生きる。

なぜ、真は自殺してしまったか

真の体に入り込むのに成功した僕は

真がなぜ、自殺したんのかを探っていきます。

最初はこんないい家族に囲まれて

自殺する理由がわからない。

学校でいじめられているのか?

その辺りから観察していきます。

僕を担当しているガイド役の天使が

ザーッと真の周囲の人間の事を

教えてくれます。

人当たりが良い父は卑屈な人だった

真を見舞いに来てくれるお父さんは

ふくふくした顔をいつもほころばしている

誰にでも親切な父は

上司の失脚を喜び自分の出世に小躍りする

自分さえ良ければいい人だった。

良妻賢母の母は不倫をしていた

真を心配そうに見つめる母親。

実はフラメンコ講師と不倫していた

初恋の相手がラブホテルに入るのを

見た時に母の不倫も目撃してしまう。

充血した眼で看病している兄は意地悪男

母と交代で真を看病してくれた兄は

嫌味ばかりいう意地悪男。

病院から帰ってきた真に

「この死に損ないが…」と言い放つ。

初恋の女の子は援助交際

一人だけ気軽に話しかけてくれた女の子

桑原ひろかは中年の親父とラブホテルに

行くのを目撃する。

自分に無関心なクラスメイト

何日も学校を休んでいるのに

誰も見舞いも連絡もよこさない。

真はクラスから外れた存在。

真は独自の世界を持っていると

周りから思われていつも一人でいた。

影の薄い貧相な顔つきの真自身

目は細く鼻も低い。唇はちんまりいかにも

影が薄い。

笑顔が似合わない。明るい印象がまるでない。

真が死んでしまいたくなった理由はいっぱい

あることはわかった。

それでも本当に死ぬ理由はあったのか

僕は生前の記憶をなくし、真の体に入り込み

真の自殺する前の状況をヒントに

自分の犯した罪を思い出し転生の輪廻に

戻してもらい、真は危篤状態から復活する。

真の人生を他人事のように過ごすうちに

いろんな真実が見えてくた。

上司の失脚を喜び出世して

喜んでいるとばかり思っていた父は

会社を良くしょうと必死で戦ってきて

ようやく結実したのだという事。

名も無きサラリーマンが家族の為

会社のために踏みとどまって冷遇に

耐えた事を父は誇りに思っていた。

母親の不倫はさずがに耐えられない

ものだと思ったかが

決して父親を蔑んでいるわけではなく

父の浮気相手が別れて欲しいと

言ってきたのが3回ほどあるという事実。

それでもこれまで父を憎まずに

過ごせたのは、母の貞操観念の低下

によるものだった事。

意地悪な兄は、真が奇跡的に

生き返ったことに医者への感謝と偉大感を

抱き、医学部進学へと進路を決める。

真の得意な絵の勉強ができる

学校を進めるために、自身は浪人して

奨学金を狙うと両親に話していた事。

援助交際をしていた初恋の相手は

真に苦しい心境を吐露することができ

抱きしめてあげることが出来た事。

クラスで必要とされず孤立していた

と思い込んでいたけれど

自分の大切なものを同じよう大切に

思ってくれる友達が一人できた事。

自分は気がついていなかったけれど

自分の存在を生きる支えにしてくれていた

女の子がいた事。

僕は思いました。

真は死んではいけない存在なんだと

このまま死んでしまってはいけない。

真の魂を元に戻さなくては…

そのために僕は自分の罪を思い出さなければ

ならない。

そして、真を生かしたい一心で考えると

思い出しました。僕の罪を…

僕の罪は自分を殺してしまった事。

真は僕だった。

まとめ

自分が死を選びそれを実行する時は

もう、何も考えられずただただ楽になりたい

一心なのかもしれません。

この物語の主人公もガイド役の天使に会った時

前世の記録を無くした僕に生まれ変わりを

促した時、

「何となくいやなんです。ぼくは今、

ぶらっと入ったデパートで突然くす玉が

割れて、おめでとう、あなたは来店百万人目の

お客様です。今すぐハワイ旅行へ行けだの

強引に押しつけられた気分なんです。

ぼくは家で寝ていたいのに」

カラフル 森 絵都著

それが真の人生を客観的に生きてみると

とりかえしのつかないことをしたことに

気付きます。

天使がさっていく時に真に言います。

また下界で縮こまりそうになったら

また、自分の体にホームステイしている

と思ってくださいと。

そして再びここに戻ってくる。

せいぜいあと数十年の人生です

少し長めのホームステイがまたはじまる

のだと気楽に考えてと…

ルールはリタイヤできないだけ

あとは与えられたステイ先で好きなように

過ごせば良い。

本書のように

一度死んでから自分が本当に死ななければ

ならなかったのか再検討ができて

とりかえしのつかない事を

したと思えたらやりなおすことが

制度があればどんなに良いかと

思ってしまいました。

追記

この作品は「カラフル」という表題だけ

あってとてもカラフルな言葉が

多く出てきます。

この色が物語をおしゃれにそして

視覚的にとらえやすくしています。

軽快な言葉も多く少年の自殺という

重苦しいストーリーも気持ちが

前向きになれる作品です。

カラフル
スポンサーリンク
スポンサーリンク
inuimieをフォローする
スポンサーリンク
ぽつのブログ

コメント