これは掃除婦の手引書ではない『掃除婦のための手引書』ルシア・ベルリン著

掃除婦のための手引書掃除婦のための手引書
スポンサーリンク

家事代行の手引書ではないのです。

高校教師、ERの看護師、掃除婦、

電話交換手などの仕事を転々としながら

4人の子供をもつシングルマザーの

自叙伝でもでもないのです。

彼女が書いた短編の小説は

生活に根ざしたリアルさがあるのに

センチメンタル

感情も表現されていて

掃除婦の心得

移動のバスの中でもうジョセルさん宅の

仕事は辞めようと考えている

掃除婦のマギー。

給金が小切手なので換金のための

時間とコストがかかるためです。

何でも忘れるジョセルさん宅

ジョセルさんは何でも忘れてしまう。

そして、マギー以外の話し相手もいないし

弁護士の夫に愛人がいることも

知ってても忘れてしまうほどなのです。

掃除婦が物を盗むのは本当だ。

ただし雇い主が神経を尖らせて

いるものは取らない。

余りもののおこばれをもらう。

『掃除婦のための手引書』ルシア・ベルリン著

何とおこぼれを頂戴するのは

当たり前のようです。

マギーはジョセルさん宅で睡眠薬を

くすねます。

後、ゴマをひと瓶盗みます。

料理を滅多にしない

ジョセルさんでしたし

15個もあったからです。

ちなみに雇う方は、灰皿にわざと

小銭を入れて、雇った掃除婦が

信用たる者かを試したりしていますが

ジョセルさんはそんなことはできないし

マギーもそんなわかりやすい罠に

引っ掛かりはしません。

バスの中で同じ掃除婦と話をする

マギーはそのことを同僚たちに

帰りのバスの中で話、笑っていますが

マギーもこの掃除婦仲間に

打ち解けられるのに

時間がかかりました。

何で掃除婦をしているのかと

「学がある」ためやっかまれて

いたからです。

マギーもアルコール中毒の夫ターに

先立たれ、

4人の子供を育てるため

手っ取り早く

仕事をみつけたかったのです。

今日は、バスでトラブルがあったので

話が弾みます。

(掃除婦たちへ:原則、友だちの家では

 働かないこと。

 遅かれ早かれ、知りすぎたせいで

 憎まれる。

 でなければいろいろ知りすぎて

 こちらが嫌になる。)

『掃除婦のための手引書』ルシア・ベルリン著

そう忠告されてはいたのですが

マギーは古くからの知り合いの

リンダとボフの夫婦の家で

仕事をします。

それは気楽だったのもありますが

そこから死んだ夫と共に暮らした

家を見ることができたからだと

私は思います。

思い出に浸り、夫ターのことを

偲ぶことができたのです。

イカれた家ブルームさん宅

マギーが通っている家の中で

最もイカれた家で唯一豪邸に

精神科医の夫婦が住んでいました。

(掃除婦たちへ:

 猫のこと。

 飼い猫とはけっして馴れあわないこと。

 モップや雑巾にじゃれつつかしてはだめ、

 奥様に嫉妬されるから。

 反対に犬とはつとめて仲良くすること。)

『掃除婦たちのための手引書』ルシア・ベルリン著

後、このような手引もある。

(“就学前“の子供がいる家では

 絶対に働かないこと。

 赤ちゃんなら文句なし、

 何時間でも眺めて抱っこして

 いられる。

 でも少し育ったのときたら

 金切り声、干からびたチェリオス、

 スヌーピのパジャマ踏み散らかされた

あげく固まったおもらし。)

『掃除婦たちのための手引書』ルシア・ベルリン著

ここにいる子供たちにできるだけ

干渉しないように

マギーは務めます。

夫ターを亡くしたマギーは

父、母、子供が揃った家庭に

干渉したい様子です。

ターはバークレーのゴミ箱に似ている

ちょっと失礼な例えですが

著者の直喩が素晴らしいと

解説に書いてあるのを

以前、読んだことがあります。

ターはバークレーのゴミ捨て場に

似ていた。あのゴミ捨て場に行く

バスがあったらいいのに。

『掃除婦たちのための手引書』ルシア・ベルリン著

マギーもサンパウロ通りに似ているから

お前が好きだよとターに

言われたことがありました。

二人でよく言った場所なのです。

ターが死んだことに耐えられない

気持ちでいっぱいです。

みっちり家事を教えてくれたバーク宅

ここでまた“掃除婦“としてのコツが

書かれています。

掃除婦たち:手抜きしない掃除婦だと

思わせること。

初日は、家具を全部まちがって戻す

五センチ、十センチずつずらして置く、

あるいは向きを逆にする、

シャム猫を背中あわせに置く

ミルクピッチャーを砂糖の左に置く

歯ブラシを全部でたらめに並べかえる

『掃除婦たちのための手引書』ルシア・ベルリン著

ここでは、

具体的な“掃除婦“の玄人からの

アドバイスがあります。

マギーも仕事やってます感を

出すためのいろんな技を繰り広げます。

そして、掃除婦に行くなら

ユダヤ人が黒人の家に行きたいと

思っています。

それは、掃除婦を置くことが当たり前

なので

パークさんのように

“罪悪感“がない方が

良いと言っています。

新しい本物の奥様

その奥様はマギーのことを

「クリーニングレディ“と呼びます。

ミセス・ヨハンセンはお上品なのに

言葉はスラングでマギーはびっくりします。

ミセス・ヨハンセンも夫を半年前に

亡くしています。

眠れないので

パズルを開いていたら

寝るどころか食べるのも忘れて

やってしまったといい、

パズルのピースが足りないので

探すのをマギーに頼むのです。

見つかったパズルを

彼女はため息をつきながら

はめました。

帰りにマギーは自分がこれからも必要か

と聞いてみたところ

「それは神のみぞ知る、よ」と

そしてマギーは

「なるようになるよね」と返事します。

マギーはここで死にたくないと

思いました。

マギーはターを失ったことを

必死で紛らわそうと必死に仕事をし

生きていましたが

時に後を追いたくなって

睡眠薬をためていました。

コインランドリー前のバス停で

降りて

何でない風景を眺めています。

マギーはやっと泣くことができたのです。

掃除婦のための手引書
スポンサーリンク
スポンサーリンク
inuimieをフォローする
スポンサーリンク
ぽつのブログ

コメント