【竹馬の友】天真爛漫な友や兄に振り回される『走れメロス』太宰治著

走れメロス走れメロス
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“メロスは激怒した“から

始まる太宰治(昭和15年:1940年)の

作品で

自堕落(デカダンス)な生活を送っていた

著者が麻薬中毒を完治させて

正式に結婚した頃の

著者にからすれば、比較的

明るくてコミカルな作品で

知られています。

汗と涙のスポ根作品 走れメロス

“メロスは激怒した“

「メロスは単純な男だ」と

著者は

主人公メロスに対して

はっきり記している。

なんか、著者にまで揶揄されて

可哀想な感じがするのですが

それがまた、

本作品の魅力なのでしょう。

舞台もイタリアのシチリア島を

舞台にして

王様を登場させているので

西洋の寓話的なイメージがして

これも著者の他の作品とは違う

要素ではないでしょうか?

主人公は単純、殺戮の王様登場で

著者のいつもの

ちょっと“爛れた“作品とは違う

汗と涙のスポ根のような作品で

著者の私生活も一般的にいう

“充実した日々“だったことが

垣間見られます。

メロスは激怒した

とにかく、

主人公は怒っているのでしょう。

何に怒っているのでしょうか。

メロスも最初は怒っていなかった

のです。

むしろ、喜んでいたのです。

今度、結婚する妹のために

婚礼準備のお買い物をしに

村から野を越え山越え、

シラクスの市にやってきたついでに

竹馬の友、セリヌンティウスに

2年ぶりに会うつもりだったのです。

なのに、

激怒して買い物を背負ったまま

王城に入って行ったのです。

というのも

王様は猜疑心が高じて

妹、子供、姪、皇后、賢臣を

次から次へと殺し

目につく全ての人は呼びつけられて

殺していっていると

聞きつけたからです。

メロスは単純な男と

著者が明言しているように

市の人の話を聞いただけで

激怒して、

王様を退治しようと短剣をもち

乗り込んでいきましたが

案の定、捕縛されます。

王様に理由を聞かれると

「市を暴君の手から救うのだ」と

いうと、王様は

憫笑(憐れみ、さげすんで笑う)して

「おまえにはわしの孤独の心がわからぬ」

と言われると

またいきりたって

「人を疑うのは悪徳だ」と罵ります。

すると

「それをわしに教えたのはおまえたちだ」と

言い返されます。

それにしても

メロスはただ買い物中に衝動的に

乗り込んできた割には

王様はメロスの話に耳を傾けています。

正面突破は効果があるのですね。

単純なんて馬鹿にはできません。

竹馬の友を人質に差し出す

口で偉そうなことばかり言わずに

「民のために死んでみろ」と

王様に言われたメロスは

死ぬ覚悟は出来ているが

妹の婚礼のために3日間だけ

待ってほしいと王様に言い張ります。

人が信じられないと

家族ですら殺戮していっている

王様に対してメロスは

「よく言うな〜」と言うのが

率直な感想ですが

もちろん、王様だって納得しません。

すると、

あの竹馬の友で2年間会ってなかった

セリヌンティウスを代わりに

おいていくから

自分が帰らなかったら

この友を締め殺して良いと

いうのです。

これには、私も多分王様も

びっくりしたことでしょう。

セリヌンくんも

「先に自分に聞いてから決めて欲しい」

ぐらいは思ったでしょう。

でも、セリヌンティウスは納得して

お城に留め置かれ

メロスは

とりあえず“往路“の家までは

急ぎに急いで帰った。

結婚式を明日にしてくれ!

メロスは買ってきた婚礼道具を

妹に渡し、

「市に用事を残してきて、

 早く戻りたいから

 明日、婚礼をあげてほしい」と

花婿に頼むが用意もできてないし

式はまだ先の予定なのに

事情も説明せずに

「明日してほしい」と無理難題を

いうメロスです。

確かに事情を説明したら

妹夫婦もびっくり仰天する

だろうし

何やってるねん!って

呆れもするでしょう。

それも強引に式を挙げさせ

さあ帰ろうとしますが

まだ、時間があるので

休んでから帰ろうとします。

メロスの神経がわかりません。

親友は一刻も早く帰ってきて

欲しいと思っているでしょう。

なのにメロスは

明日の日没に間に合えば良いんでしょって

感じなのでしょうか?

やっぱりハプニングが仕込んである

物語の主旨として

メロスにも王様の心境を理解させる

場面を作らなければ

なりません。

メロスにも心の葛藤が起こる

場面が訪れます。

“復路“では行手を阻まれます。

豪雨のために川が氾濫して

泳いで道を渡らなくてはなりません。

それに山賊にも襲われます。

精も根も尽きて大の字になって

倒れてしまいます。

王城へ行かないといけないと

思いながらも立ち上がり

走ることができません。

セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ

これ以上、私に望まないでくれ!

放っておいてくれ!

どうでも良いのだ。

私は負けたのだから仕方がない。

自分なりには頑張った!

そういう気持ちにメロスは陥ります。

王様のことを

不義理な男と罵りながら

自分も同じような運命を辿ろうと

している。

私はおくれて行くだろう。

王はひとり合点して私を笑い

そうして事もなく

私を放免するだろう。

(中略)

正義だの、真実など、愛だの、

考えてみれば、くだらない。

人を殺して自分が生きる。

それが人間世界の定法では

なかったか。

ああ、何もかも、ばかばかしい。

私は裏切り者だ。

勝手にすればよい。

『走れメロス』太宰治

王様に苦言を呈した時の

メロスは何の憂いもなく

心から信頼できる妹と親友がおり

満ち足りていました。

けれども、今はどうでしょう。

立場が変われば、あの命懸けの

正義感も木っ端微塵に

なってしまうのです。

走るんかい!メロス

ふと、耳には清水の流れる音が

聞こえてきます。

それをすくって一口飲むと

疲労が嘘のように回復し

また、走り出すことができました。

私は信用されている。

先刻の、あの悪魔の囁きは、

あれは夢だ。

悪い夢だ。

忘れてしまえ。

五臓が

疲れているときは

ふいにあんな悪い夢を見るものだ。

メロス、おまえの恥ではない。

やはり、おまえは真の勇者だ。

『走れメロス』太宰治

メロスは単純であるのは

著者も読者も認めることでしょう。

でももし“走らなかったら“を考えられ

状況次第で人の認識は変わると

いうことがわかり

メロスもある意味小慣れた大人に

成長したのでしょう。

もっと恐ろしいもののために走るんだ

メロスは走った。

それは

人の命がかかっているからではなく

信頼と誠実のために。

そして、

それが大きな力になり

それに

引きずられるように走っているのです。

そして、見事間に合うことができて

セリヌンティウスは助かりました。

お互いの頬を殴り合う

なんで?

メロスは一回くらい殴られても

しょうがないでしょう。

メロスが「私を殴れ」と言ったのは

正解です。

でも、セリヌンティウスが殴れと

いうのは、

おかしいじゃないですか?

しかも、

実際にメロスは殴っています。

セリヌンくんがいうのには

「帰って来ないかもしれない」って

疑ったことが一回あったからですって!

私だったら何回も思います。

メロスは単純で無計画な主人公

だから…

まあ、王様も改心したし

全裸で帰ってきたのでそのgutsは

認めないといけないかと

ちらっと思いましたけどね。

メロスは最後、

全裸を気遣ってマントを

持ってきてくれた少女に赤面して

終わります。

メロスは“独身“であると

冒頭で紹介していたので

これきっかけでロマンスなんかが

生まれるのでしょうか?

走れメロス
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