③ぼくは何色でもない『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルーぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー
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「母ちゃんは自分のこと

 オリエンタル(東洋人)だと

 思っているよね」

日本人の母とアイルランド人の父の

間に生まれた著者の息子は

今、自分のアイデンティティの問題に

ぶち当たっています。

帰属意識が持てない

元底辺中学校で

白人の労働階級の子供たちが

ほとんど占めるこの学校に通う

著者の息子はあることがきっかけで

自分の“所属“がわからなくなります。

黄色いベストを着た生徒会長

安全確保のために着せられる

“黄色いベスト“は

労働階級を表すこともあるし

単に危険を避けるために

英国では義務づけられています。

少年は下校の途中に

実家のチャイニーズ・テイクアウトの

手伝いで

黄色いベストを着て、自転車で通りすぎる

生徒会長に出会い

しばらく歩いていると

「そのベスト、似合ってるよ」と

すれ違いざまに

「ヴェリー・イエロー」と蔑む

上級生の声が聞こえ、生徒会長は飛びかかり

喧嘩になり

結局、相手は怪我をするが

差別発言もあったので“両成敗“と

なってこの問題は収束したけれど

少年(著者の息子)はここで

考え込んでしまい、軽く熱発します。

ぼくは釈然としない

なぜ、喧嘩をしていない息子が

「釈然としない」のか聞いてみると

生徒会長は普段は冷静で

そんな喧嘩をするような人では

なかったのに

今回はなぜあんなことをしたのが

考えていたら

多分、ぼくのせいだと思うというのである。

「困ったことや嫌なことがあったら

 ぼくに言ってきな」と

言ってくれているのは、

こんな時のためではないかと考えて

いるようなのだ。

でも、ぼくは“生徒会長“がバカにされて

いると思っていて

ぼくには当事者意識はなかったと

いうのだ。

ぼくが“差別されている“と思って

頑張って抗議してくれたのに…

同じ人種の僕に、差別されたら

闘うんだってことを

見せるために…

そんな気持ちがわからない、

ピンと来ない…

どこにも属さない存在

生徒会長のような強い

“仲間意識“を持てないことを

息子は悩んでいるということが

わかった。

著者と一緒に日本に行った時も

お店で『ガイジン』と

「日本人じゃないから帰れ!」とか

言われたことも引き合いに

出して著者に息子は説明します。

こっちに帰ってきたで

『チンク』と言われ

ぼくはどちらにも属さない。

属すことで得られるメリットも

デミリットも味わうことができない。

ただ、自由なだけでいいのか

悩んでいる息子に

私が感じる、中国人“生徒会長“として

白人の集団の中で頂点を極める

という「胸がすくような思い」は

感じることはないんだと

実感するのです。

人種差別は「仲間意識」を強める

「チンキー」「ニーハオ」などふざけて

言われることは、傷つき、悲しい思いを

すると同時に

言われたものの間で仲間意識が強まり

“分裂“を招いていく。

著者の息子は

違う人種との間で生まれたので

どちらにも属しているようで

実際はどこにも属さず“差別されている“

感覚がなければ

誰かが人種差別と闘っている姿を

みるたびに一抹の“孤独“を

感じてしまうのでしょう。

著者はみんなもきっと一度は

この“アイデンティティ“で

悩むことがあると思うよと

一様、納得してもらいます。

まとめます

どこにも属さない存在は

“差別感情“が生まれにくく

著者にとっては

息子の自由度が良いことだと

思っていたようですが

そのことで仲間で助け合うという

意識が感じられない

少しの“孤独“を感じてしまう

ものなのだ。

人種差別は悪いことなどで

帰属意識が強すぎるのも

問題なのかもしれませんが

自分が何色なのかはっきり

しないのも不安の要素なのかも

しれません。

人種など自分でどうにかできるもの

でもないにも関わらず

強い仲間意識を呼び対立の火種に

なるにための“色分け“は

無いに越したことがないのですが

そのためにはそれぞれが強く

そして、

“無知“であってはなくならないのです。

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