【感想】やり直しが効かないと思い始める時期『ビタミンF』重松清著

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他人から見れば平凡でありきたりの毎日。

30代後半から40代の差し掛かり

いわゆる“アラフォー“の時期に

ふと、こんな人生でよかったのか?

振り返りたくなる瞬間がある。

その瞬間を本書は切り取り

深く突き止め短編小説に綴っている。

2001年に本書は直木賞を

受賞している。

もう、時期も通り過ぎてしまった

私ですが同時の葛藤が思い出されて

妙に納得してしまうところが

あったので紹介します。

「愛」や「夢」が気恥ずかしい

人によって、40代に差し掛かろうと

する時、「もう」と思う人もあれば

「まだ」と思う人もいる。

サザンオールスターズの古い歌を

息だけで口ずさんでみる。

歌詞に「愛」や「夢」や「自由」が

出てくる歌を歌うのが

気恥ずかしくてたまらなったのは

何歳頃からだったろう。

「ビタミンF」重松清著

確かに😆

もうそんな歌詞を渾身の力を込めて

歌い上げるのは

気恥ずかしいというか

添わないというか…

まあ私は「情熱」なんかの言葉は

若い頃よりは好きなワードに

なってますが…

「もしも」の後にはろくな言葉が続かない

10代の頃など「もしも」の後に続くのは

空想じみた良いことばかりが考えつくのに

この時期になると

「もしも」の後がネガティブになっていく

と書かれています。

「もしも」リストラにあったら、

「もしも」病気になったから

「もしも」親の介護をするように

なったら…

たしかにそうですね。😆

こんなふうに「もしも」を

遡らせ、

子供が産まれてなければ

結婚してなければ

違う人と結婚していればなど

振り返って後悔することが

増えていくのもこの頃からかと

本書を読んで感じます。

子供が親離れし始める

これも個人差があるのかもしれませんが

この時期になると自分を頼りにし

そばにいた子供たちは少しずつ

親と距離をとるようになる。

親と顔を突き合わせるより

友だちといたほうがずっと楽しい

ことぐらい、

雅夫だって知っている。

昼間の街よりも夜の街のほうが

たとえなにをするわけでなくても

遥かに魅力的だということも、

知っている。

それでも「遊びにいってこい」とは

言えない。

「遊びに行くな」と、

いつまで言えるのかわからない。

「ビタミンF」重松清著

自分の子供の時と照らし合わせて

考えて確かにこんな時期が来るのは

わかっていても

いざ、自分が大人になると

“正しさ“に囚われて

自分の子供の頃に

感じていた理屈ではない衝動を

自分の子供には許容することが

できないジレンマを感じる始めるのが

この著書の主人公たち“アラフォー“の

時期なのでしょう。

この頃から自分の親が当時どんな気持ち

だったか思いを馳せる時期でも

あるように思います。

子供にとって“正しさ”の象徴でありたい

中学生の子供を持ったこの世代の

親は体力的に子供が自分より

大きくなり始めたり

力が強くなってきたりすることです。

本書では注意されて逃げる途中で

転んで怪我をした不良息子が

父親に背中におわれて帰る場面が

あります。

息子は潰れるから無理といって

拒否しますが

父親は「だいじょうぶだよ」と言います。

「親父をなめるなよ、

 こういうときは力が出るんだから」

ですよね、と岡田さんを振り向いた。

岡田さんはたしかに小柄で

運動とはおそらく無縁の日々を

過ごしていて、

一瞬不安げな顔にもなったが

「やっぱりやめときます。」とは

言わなかった。

「ビタミンF」重松清著

体格も体力も衰えようが

「父親」としての威厳を保ちたい

切な気持ちがそうさせるのか。

家族の中でいつの間にか“疎外感“が

生まれている父親。

家族のためにと思って言ったことも

ちぐはぐ感が否めない毎日。

「俺らずーっと、うんざりしてるんだよ

あんたに。

優香もお母さんも、そう思ってるんだよ。

なんでも自分がいちばんだって

カッコつけて余裕こいて、

まわりのことばっかり気にしてよお、

クソがよお…」

「ビタミンF」重松清著

子供にとって

父親は“正しさ“の象徴となり

時として

その存在が子供を傷つけている。

本当は余裕はないのだけれど

そんな風に思われるのが

この年代ぐらいからなのかも

しれません。

時にだらしない弱みを見せたり

愚直に頑張る父親の姿を見せることが

どんな正当な小言より

有効なのでしょう。

この時期にしか味わえない

親子の関係かもしれません。

感想

この時期特有のジレンマに気がつくことが

できる作品で

何か気分のモヤモヤが整理されたような

気がしました。

人生の選択においても

あの道を選んでいたら

この道を選んでいたらと

色々な「もしも」を考え始める頃。

本書を読んで「自分だけじゃないんだ」

と納得できたのがよかったと

思います。

人生において

この“中途半端“な年代の意味は

「これで良いんだ。」

「もうやり直しが効かないんだ」と

念を押す時期なのかもしれません。

本書では7つの家族(Family )を著し

気付かせ、悟し、破綻を防ぐ

役目を担うようなビタミン的な作品

なのです。

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