あなたは見えないところで頑張っている『遺伝子はダメなあなたを愛してる』福岡伸一著

遺伝子遺伝子はダメなあなたを愛している
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著書『生物と無生物のあいだ』で

有名な著者が

世間一般のお悩みを

生物学者である著者が

分子・遺伝子の場合に置き換えて

いろんな質問に答えていくと

いう形式で書かれた面白い

試みの書籍です。

その一部を感想と交えて

紹介したいと思います。

ゴキブリは絶滅してほしい

質問は

「初めて彼が部屋に来たのに

 ゴキブリが出た。

 ゴキブリなんて絶滅してほしい。」

という相談に端的に著者は

「間違っている」と答えています。

私もあのお姿だけでもゾッっと

してしまい、

もう二度とお会いしたくないのですが

それが相手には多分伝わらないので

闇に葬らさせてもらいますが

著者は

“刺す“ことも“噛む“ことも

“攻撃“してくることもない相手を

問答無用で即、殺すのは

生きとし生けるもの同士として

フェアでないと言っています。

いえいえ、バイ菌を運んで

来そうじゃないですか?と

私は思うのですが

本書では

ゴキブリが他の生物に比べて

極端に汚染されていたり、

特別な病原菌を媒介するといった

科学的根拠はないと言っています。

ゴキブリ=病原菌と思う気持ちが

あのお姿までグロテスクに感じて

いたようです。

昆虫好きの著者からすれば

流線型の姿態、黒光りする翅、

機敏な動きが美しく感じ

しかもそれが三億年前から変わらない

ことのも敬意を払っています。

生き物についての知識を深く

持つ者と持たぬ者の違いが

如実に現れると感じました。😆

情報社会に疲れた

メールやSNSは人と人を繋ぐツール

なのですが

過ぎると疲れることがあります。

著者は分子・遺伝子学者なので

細胞と細胞のつながりでこの質問に

答えています。

人は約60兆個の細胞から成り立っていて

一つ一つは“膜“に包まれていて

それだけでは連携して働くことが

できません。

そこで、細胞と細胞を繋ぐ

情報伝達物質が必要になります。

例えばよく聞くのであれば

“インスリン“や“シナプス“という

ものがあります。

“インスリン“は血糖をコントロールする

働きをさせるため、

“シナプス“は感覚や運動などの

神経を行き渡らせるためと

細胞単体ではできないことを

情報伝達することによって

可能にしています。

この情報の受け渡しはとても重要なの

ですが

この情報はすぐに消えてしまいます。

この“消える“ことが生き物にとっては

大切なことで古い情報を

目まぐるしく変化する

体内に合わせて変化させるために

必要なことになります。

このあたりが人と人、細胞と細胞を

繋ぐ情報の違いで

あたかも、人間らしい(生き物らしい?)

情報のやり取りのようでも

ネットやメールの言葉は

いつまでも消えません。

トゲとなって残るのです。

細胞間の情報のように

振り回されるのは仕方ないとしても

私たちが作り出した「人工の情報」は

生命体ではないと著者は言っています。

ゆえにこれは生きていくために

絶対必要なものではないという

自覚は必要なのかもしれません。

片付けられない女はダメですか?

どんなに「片付けられない女」でも

生きている限りは“片付けて“

いるのです。

細胞レベルの話ですが…😆

DNAからRNA、RNAからタンパク質が

作られる機構は全ての生物で共通で

一通りしかないということですが

しかし、作るのは一通りなのに

捨てる方法は10通りほどあることが

わかったようです。

ということは、作っても捨てるものも

多いということです。

しかも、

まだ使える作って間がないものでも

まとめて捨ててしまうようです。

(オートファジーと呼ばれる)

これらを捨てる(分解)するにも

多大なるエネルギーが必要にも

関わらず生命体はそれを

行います。

建物やものに例えると

一旦立てたり、作ったりしたものは

だんだん劣化していきます。

身体は

劣化したものだけでなく

劣化しそうなもの

劣化したらボリューミーで困るもの

もあらゆるものを粗末します。

それは煩雑になると無秩序に

動き始めいろんなものが

朽ち果てていく自然の流れ

(エントロピー増大の法則)

を食い止める策なのです。

このような自転車操業のような

ことを繰り返し私たちは

必死に死を先延ばししているので

多少、物が片付けられないくらい

なんてことないと

著者は言いたいのでしょう。

感想

私たちが見えないところで

自分を含め「生き物」たちは必死に

“生きて“いるのだと思うと

世の中に起こっている様々な

問題も

「大したことないのかも」と

錯覚を起こしそうな気分に

させてくれる本でした。

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