【聖性と魔性】世の男性を虜にする理想の女性像『高野聖』泉鏡花著

高野聖高野聖
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著者の代表作である『高野聖』。

ここの出てくる婦人は

山中に迷い込んだ男たちを

次から次に獣に変えていった。

そこに修行僧が現れて

どうなるのかという自身の

昔話を旅の途中で一緒になった

若者に語るお話なのですが

この妖艶な婦人と俗世を遠ざけた僧との

コントラストが

混じるあうのかハラハラする所に

単純に惹かれて読んでみました。

どのぐらい魅力的な女性なのでしょう。

あらすじ

若狭へ帰省する途中であった「私」に

旅僧が自分に起こった不思議な

昔話を語る。

若い修行僧の時、

飛騨山中で薬屋の男と出会い

その男を追って山中の孤家に

たどりつく。

途中、蛇や蛭に難行苦行しながら

やってきたので

身体が汚れているので川で

洗ってくるようその家の婦人に

勧められ、身体を洗っていると

後ろから裸体の婦人が背中を流し

始めた。

その夫人には

猿やコウモリがまとわりついて

婦人と僧はそのまま家に戻る。

その晩、鳥獣たちの鳴き騒ぐ声に

不気味さを感じ陀羅尼経を呪した。

翌朝、その婦人の家を経つが

その婦人が忘れられず

僧侶の身分を捨てて、生涯

婦人とともに暮らそうと引き返そうと

するのですが

婦人の世話がかりの男に

今、その男が売ってきた馬は

自分が追ってきた薬屋の男だと

聞いて

引き返すのをやめたという。

その話を若者にした僧(宗朝)は

翌朝、

雪の降るなか坂道を上り去っていく。

聖性な女人のイメージ

(おお、御坊様)と立ち顕われたのは

小造りの美しい、声も清しい、

ものやさしい。

高野聖 泉鏡花著

宗朝(修行僧)がこの婦人にあった最初の印象。

最初の印象からも

好感度は高かったようです。

髪は房りとするのを束ねてな

櫛をはさんで簪で留めている、

その姿の佳さというては

なかった。

高野聖 泉鏡花著

僧を部屋へ案内する時の様子。

清楚な女性らしい感じをしかと観察

しています。

婦人はいつかもう米を精げ果てて

衣紋の乱れた、乳の端もほの見ゆる

膨らかな胸を反らして立った

鼻高く口を結んで目を恍惚と

上を向いて頂を仰いだが

月はなお半腹のその累々たる巌を

照らすばかり。

高野聖 泉鏡花著

僧と二人で川に体を洗いにいく場面。

この後、僧に裸体になって洗ったらと

促します。

僧は恥じらいがあったので行儀良く

洗っていたのですが…

婦人に対して

色香を感じ始めていた僧は

この辺りから婦人の妖艶さに

頑な気持ちが溶け始め

自分のお召しを促されるかまま

脱いでしまいます。

魔性の女人のイメージ

ここから、婦人の本領が発揮し始めます。

クライマックス入浴シーン?

(それでは、こんなものでこすりましては

 柔らかいお肌が擦り剥けましょう)と

 いうと手が綿のように障った。

それから両方の肩から、背、横腹、臂

さらさら水をかけてはさすってくれる。

高野聖 泉鏡花著

さらに

「さあ、そうやっていつの間にやら

 現とともなし、こう、その不思議な

 結構な薫のする暖かい花の中へ

 柔らかに包まれて

 (中略)

 女の手が背後から肩越しに

 おさえたので確りつかまった。

高野聖 泉鏡花著

まあこうなってしまったは

高僧であっても

振り払うのは無理でしょう。

しかも婦人もなぜか裸体になって

います。

山家の者には肖合わぬ、

都にもまれな器量はいうに及ばぬが

弱々しそうな風采じゃ

背中を流す中にもはっはっと内証で

呼吸がはずむから

もう、断わろう断わろうと

思いながら、例の恍惚で

気がつきながら洗わした。

高野聖 泉鏡花著

この通り、止められないほどの婦人の

妖艶さに酔ってしまっている。

しかし、そうしていると

婦人の周りには

獣がまとわりついてきたので

なんとかことなきを得るのです。

僧、引き返し婦人と生涯を過ごしたい

その手と手を取り交わすには

及ばずとも

傍につき添って、朝夕の話対手、

蕈の汁でご膳を食べたり

私が榾を焚いて、婦人が鍋をかけて

私が木の実を拾って、婦人が皮を剥いて

それから障子の内と外で

話をしたり、笑ったり、それから

谷川で二人して、その時の婦人が裸体に

なって、わしが背中へ呼吸が通って

微妙な薫の花びらに暖かに包まれたら

そのまま命が失せても可い!

高野聖 泉鏡花著

一旦は別れてからやっぱりと

この妄想がすごい!

最後の方では私→わしになって完全に

僧という立場を忘れてしまっている。

その時、親仁に出会う。

そして僧の様子を察して

このまま修行に励みなさいと

諭される。

婦人と肉体関係を持ったものは

一息で獣にされてしまい

その獣を売って生活している。

婦人の周りにいるのは好色で獣に

変えられた男たちだということも

教えられた。

僧に「ラッキーだったね」と

言わんばかりに…

それで引き返すのをやめた僧ですが

なんかロマンチックな空想をしていた

のに、親仁の話を聞いて急に

踵を返すなんて

男らしいといえば良い聞こえですが

ただ、女の色香に惑わされただけ

だったということですね。

よくよく考えれば

白痴とは言え旦那さんがいる

婦人ですしね。

邪な考えと言われればそうでしょう。

ちょっとばかり、行動に起こすのが

遅れた(躊躇した)のが幸いだった

ということでしょう。

まとめます

厭な性格で好色の薬屋を

心配して分け入った山中で

婦人の色香に翻弄されることに

なった僧。

その心配していた(すっかり忘れていたけど)

薬屋が馬にされて売られたのを

知らされて我に帰り

馬を売ってきた親仁に

「しっかり修行しなさい」と

言われる。

この婦人の

質素な生活から伺える清楚な聖性と

大胆で妖艶な魔性が僧侶であっても

虜にしてしまう、そして

それを歳が経ても忘れず若者に

語ってしまう本書の女性は

世の男性の理想の頂点なのでしょうか

高野聖
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