【感想】理論で「愛」が証明できるか? 容疑者Xの献身 東野圭吾著

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感情と理論は相反するものですが

この作品を読むと

理論と感情がお互いを

際立たせて、どちらの純度も上げて行く。

この二つを成り立たせることが

お互いの真実を証明するものに

なるということが

改めてわかった気がしました。

必ずどこかに解がある数式

数学教師の「石神」は

隣人のシングルマザー「靖子」を

助けるため、

いろんな仕掛けをしていき

警察や物理学者湯川を翻弄させます。

その仕掛けは、

「石神」が今まで解いてきた

「数式」よりも巧妙で難問で

決して解かれてはならないものに

しなければなりません。

解かれてしまっては

愛する「靖子」を助けることが

できないからです。

自分で考えて答えを出すのと

他人から聞いた答えが正しいかどうか

確かめるのとでは

どちらが簡単か

容疑者Xの献身 東野圭吾著

「石神」は一見だれもが「正解」(靖子が殺した)

と思う答えを先に際立たせて

本当の答え(靖子が犯人)を隠します。

先に解答を提示されると

それが正しいのか確かめる方が

難しいからです。

しかし、どんなに入り組んでいようが

必ず答え(真実)があるのが論理なのです。

それを暴くには

天才物理学者湯川なのです。

正義と愛は似て非なるものなのか?

自分のことは“ただの隣人“としか思われて

いないにも関わらず

その愛する人のために

「石神」はとんでもない殺人を

犯してしまいます。

湯川はそこへ切り込むことで

「石神」への敬愛の感情を

断ち切り、真実を暴こうとします。

「この世には無駄な歯車なんかないし

 その歯車の使い道を決められるのは

 歯車自身だけだ、ということを

 いいたかったんだ」

容疑者Xの献身 東野圭吾著

「石神」にとって「靖子」以外の人間は

自分も含めて

ただの歯車のような存在に思えるほど

「石神」の心は荒んでいた。

それを湯川がたしなめたことで

“解答“に辿り着いたことを悟り

湯川を引き離すため

「石神」は最終手段を取ることになる。

その手段を取ることで「石神」は

完全に解けない問題(靖子を助ける)

を作ったつもり

だったが、湯川と靖子の

「正義」が難問の綻びを作ってしまい

「石神」の出した問題は解かれることに

なった。

愛するが故に絶対に解かれては

ならない問題を解かれた

「石神」は絶望します。

「石神」の愛は証明されませんでした。

感想

感情を理論でもって

証明するのは「石神」は

可能だと思っていた。

愛する人を守るのも

自分の能力と捨て身の“献身“が

あれば、証明できると思っていた。

湯川は「愛」を証明するなんてことに

「石神」の能力が使われることを

残念がっている。

私は愛は理論で証明できるもの

ではないにしろ

それに全身全霊「石神」らしく

挑んだことは

どんな難解な数式を証明する

よりも尊い試みだと思った。

容疑者Xの献身
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