王子さまはなにが見えていなかったのか『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

星の王子さま
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“かんじんなことは目に見えないんだよ“は

有名な『星の王子さま』のフレーズですが

“目に見えないもの“を見るのは

難しいことです。

旅で出会ったキツネに

いわれた言葉なのですが

王子さまがどうして

彷徨はなければならなかったかを

王子さまに覚らせるための

フレーズだったと思います。

では、王子さまの場合

一体なにが見えていなかったのでしょう。

アフリカの砂漠を歩く

長い時間、砂原を歩いている王子さまは

やっと一本の道を見つけます。

道というものは

みな、ひとのいるところに

通じているものです。

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

遠い星に残してきた僕のバラ

そこで王子さまは遠い星に残してきた

花に似ているバラが咲きそろっている

庭にたどり着きます。

遠くに残してきた花は

自分のような花は他にはないと

言っていたのに

こんなにたくさんあるじゃないかと

嘘をつかれていたと知って

すこし不機嫌になります。

王子さまが遠くに残してきた花は

王子さまにわがままばかり言ったり

世話を開いてもらっても

当然のように太々しい態度で

ついに、王子さまはその花を

残して、その星を去っていきました。

ぼくは、この世でたった一つという

めずらしい花を持っているつもりだった。

ところが、じつは、当たり前のバラを

一つ持ってるきりだった。

(中略)

ぼくはこれじゃ、えらい王さまになんかに

なれようがない…」

王子さまは草の上につっぷして

泣きました。

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

“唯一の存在“と

思っていた自分が知っている花が

じつはたった一つの庭に5千本も

咲いていたのを見て

自分は何も特別なものを

持っていないと思って悲しくなって

しまっています。

同じ花じゃない

王子さまは姿形がそっくりなので

同じ花だと思いましたが

ここで出会ったキツネが

じつは同じではないということを

教えてくれます。

「飼い慣らす」ということ

キツネに声をかけられて

王子さまは振り返りますが

キツネはいません。

りんごの木の下に隠れています。

自分から声をかけたのに

姿を隠しているのは不思議です。

「ぼくと遊ばないかい?

 ぼく、ほんとにかなしいんだから…」

と王子さまはキツネにいいました。

「おれ、あんたと遊べないよ。

 飼いならされちゃいないんだから」

とキツネはいいました。

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

そうなのです。

“飼いならす“とは親しい関係になる、

仲間になる、友達になる

恋人になると言った意味で

“飼いならす“とキツネ風に

言っているのです。

「うん、そうだとも。

 おれの目から見ると、あんたは

 まだ、

 いまじゃ、ほかの十万もの男の子と、

 別に変わりない男の子なのさ。

 だから、おれは、あんたがいなくたって

 いいんだ。

 あんたもやっぱり、おれがいなくたって

 いいんだ。

 あんたの目から見ると、おれは、

 十万ものキツネとおなじなんだ。

だけど、あんたが、おれを飼いならすと

 おれたちは、もう、おたがいに、

はなれちゃいられなくなるよ。

 あんたは、おれにとってこの世で

たったひとりのひとになるし、

 おれは、あんたにとって、

 かけがえのないものになるんだよ…」

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

王子さまはわかりました。

自分に懐いている遠くに残してきた花は

ここに咲きそろっている

どのバラでもない“唯一の存在“で

だったのです。

王子さまが水をやったり

風除けの覆いをかけてやったり

毛虫を追い払ったりしてあげて

僕のものになった花だったのです。

キツネはさらに教えてくれます。

もし、あんたが、おれと

仲よくしてくれたら、

おれは、お日さまにあたったような

気もちになって、暮らしてゆけるんだ。

足音だって、きょうまできいてきたのとは

ちがったのがきけるんだ。

ほかの足音がすると

おれは、音楽でもきいてる気もちに

なって、

穴の外にはいだすだろうね。

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

王子さまに最初に話かけて時は

警戒してりんごの木の下の穴から

声をかけたキツネでしたが

仲良くなって親しくなると

その距離を縮めることができると

言いたいようです。

友達になると、その足音すら

他の人とはちがって聞こえるし

それが‘楽しみでしかながなくなるのです。

自分以外のものに愛情を注ぐとは

どうゆうことなのか

キツネは王子さまに語って聞かせるのです。

おれは、パンなんか食やしない。

麦なんて、なんにもなりゃしない。

だから麦ばたけを見たところで

思い出すことって、

なんにもありゃしないよ。

それどころか、おれはあれ見ると

気がふさぐんだ。

だけど、あんたのその金色の髪は

美しいなあ。

あんたがおれと仲よくしてくれたら

おれにゃ、そいつがすばらしいものに

見えるだろう。

金色の麦を見ると、あんたを思い

出すだろうな。

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

そうなのです。

友達や恋人や家族のような

間柄になると

その人がいなくてもそばに

いるように感じるのです。

このような経験は

誰にでもあると思いますが

王子さまのように

なかなか自覚することは

難しいのです。

キツネは王子さまに

他者を愛するということは

どれだけ、その相手を

特別なものに思えるか

語っています。

王子さまはキツネと友達になりたいと

思いまして。

どのように他者と仲良くなるか

王子さまはキツネに

「どのようにしたら友達になれるのか」

をきいています。

これを子供にもわかるようにキツネは

優しく王子さまに

語っています。

「しんぼうが大事だよ。

 最初は、おれからすこしはなれて、

 こんなふうに、

 草の中にすわるんだ。

 おれは、あんたをちょいちょい

 横目でみる。

 あんたはなんにもいわない。

 それも、ことばっていうやつが

 勘ちがいのもとだからだよ。

 1日1日とたってゆくうちにゃ、

 あんたは、だんだんと近いところへ

 きて、

すわれるようになるんだ…」

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

自分(キツネ)と仲良くなる方法を

自ら教えているのは面白いですが

誰とお友達になるにもこのように

押し付けがましくなく

相手の自分への警戒を解いて行きながら

焦らず、近づいていくのが

私も良いと思います。

ことばっていうのは勘ちがいのもとと

いうのは

確かにその通りで

声をかけるよりも

そっとそばに寄り添うように

時間をかけて、相手に自然と

受け入れられるのが

良いようです。

心の中ではいつまでも特別な存在

そこでふと、王子さまは思います。

もうすぐ別れがやってくるのに

友達になるなんて悲しいだけだと

王子さまは泣いていますが

キツネはまた、諭します。

「じゃなにもいいことがないじゃないか」

「いや、ある。麦ばたけの色が、あるからね」

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

あ〜泣けます。

キツネはなんてすごいのでしょう。

友達を思うというのは

そばにいるだけではなく

いない時にもその相手を思って

過ごすことができることなのだと

改めてわかりました。

むしろ、相手がいない時の方が

友達の存在意義を感じるのかも

しれません。

王子さまはなにが見えなかったのか

王子さまは遠くに残してきた花を

思い出し、

その花は

普段は王子さまに“かまってちゃん“で

そのわがままぶりに

辟易していた王子さまでした。

しかし、

王子さまが去っていく時は

しっかり王子さまを送り出しています。

自分のことは心配ないと言いながら…

キツネは王子さまにもう一回

バラたちを見にいくように進め

そこから帰ってきたら王子さまに

キツネは秘密を教えると

約束します。

「さっきの秘密をいおうかね。

 なに、なんでもないよ。

 心で見なくっちゃ、

 ものごとはよく見えないってことさ。

 かんじんなことは、 

 目に見えないんだよ」

『星の王子さま』サン・テグジュペリ著

これは有名な

『星の王子さま』のフレーズです。

改めて見に行ったバラたちに

「君たちのためには死ねない」

僕にはあの一輪の花があなたたちよりも

大切なんだと

はっきり自覚して

帰ってきた王子さまに向けていった

言葉です。

“目には見えない“

なにが見えなかったのでしょう。

王子さまは今、

わかったのだと思います。

王子さまが残してきた花が

どのように思っていたか

もう半分うんざりしてその花から

遠かった王子さまは

その時には

わからなかったのです。

その花が王子さまをどんなに必要とし

王子さまがその花をどれだけ

大切に思っていたか

言葉よりも心を読み解かなければ

ならなかったのです。

星の王子さま
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