美しいものに魅せられる心 一房の葡萄 有島武郎著

一房の葡萄一房の葡萄
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ぼくはジムの絵の具がほしくってほしくって

たまらなくなってしまったのです。

胸がいたむほど

ほしくなってしまったのです。

一房の葡萄 有島武郎著

とうとうこの少年は狂おしいほど

欲した絵の具を盗んでしまいます。

しかし、その時少年は

盗んだ海の藍色や船の洋紅色よりも

もっと美しくいつまでも思いに残る

“色“に出会うことができました。

あらすじ

少年の通う学校は横浜の山の手にあり

多くの西洋人が通っていた。

その中にジムという二歳ほど年上の少年が

いました。

その少年はさすが西洋人であるので

舶来の絵の具を持っていました。

その絵の具は綺麗な色で12色もあり、

その絵の具を使えば

どうしても見たままをかけない

横浜の海の藍色や船の水際付近の

洋紅色が描けると考え

どうしても、

それがほしくてたまらまくなり

盗むのですが

すぐ、ジムや友達にバレてしまい

先生のところへ引っ立てられます。

ジムたちは怒っているし

大好きな先生にはカッコ悪い

ところを見られるしで

シクシク泣いていると

ジムたちを教室に戻し

先生はジムだけを部屋に残し

少年の肩を抱きながら

「教場には行かなくていいから」

と一房の葡萄を手渡し

少年を一人にします。

先生は戻ってきても

説教することはなく追加で葡萄を渡し

「明日は必ず学校に来るように」と

言い渡します。

葡萄を食べ、海を見ながら帰宅。

次の日、さすがに行きたくなかった

けれど先生に逢いたい一心で

学校へ来てみると

バツが悪くもじもじしていた少年を

見つけたジムが

何もなかったかのように

先生のところへ少年を連れていった。

先生はジムと少年になっている葡萄を

もぎ取って二つに分けて

二人に渡した。

(先生の)

真白い手のひらにむらさき色の葡萄の

つぶが重なって乗っていた

その美しさをぼくは今でも

はっきりと思い出すことができます。

一房の葡萄 有島武郎著

秋になるといつまでも葡萄の房は

むらさきに色づいてうつくしく粉を

ふきますけれども、

それを受けた大理石のような白い

美しい手はどこにも見つかりません

一房の葡萄 有島武郎著

少年の美意識

内向的で体も弱く絵を描くことが好きな

少年は

横浜の海とそこに浮かぶ船

そこに映し出された空などを見ている

うちに、

それらを見たままに描けていない

自分の絵に対して不満があり

ジムの絵の具を見た途端に

この絵の具なら、

思った通りに描けると考えた。

もう、ジムのその藍色と洋紅色の

絵の具じゃなければ

描けないと思い込んでしまうのです。

少年は、その絵の具に完全に

魅せられてしまう。

少年の性格から

親に言って買ってもらったり

ジムに借りるなどということが

できるような

柔和な性格ではなかったため、

極端な行動に走ってしまった。

しかし、こういう極端な性格の少年

だったため

“美しさ“に素直に反応でき

感受性が高まったの

かもしれません。

本当の美しさとは心の中にある

結局、早々に見つかって

罪悪感と羞恥心からおいおい泣く

ことになりますが

先生はこの少年を叱ることなく

抱きしめて、葡萄を与えます。

二階の窓まで葡萄のツルが

伸びていて

都合よく葡萄をもいで食べれるって

素敵ですよね。

“美味しいのかしら“

“汚くないのかしら“

など邪推してしまいますが…w

この時、葡萄をもいで

そのむらさき色の葡萄をのせた

先生の真白い手のひらの美しさが

少年の心に

ずっと忘れられないものに

なってしまいました。

ジムの絵の具の美しさは

ほんのひと時で色褪せてしまい

ましたが

この“真白“と“むらさき色“は

これからもずっと少年の心を

彩ることになりました。

これも、先生が、

少年のやった行為(盗んだ)を

責め立てず、

その少年の罪悪感や羞恥心

に寄り添ったから感じられた

“美しい色“だったのです。

感想

子育て中、小さな子供に

対して

“美しいものに魅せられる気持ち“や

“好奇心“などに

目を向けてあげる余裕がなくて

ただ、叱ってしまうことが

あるんです。

確かに盗むのは悪いことでは

ありますが

その子供の美意識も無視して

「悪いことは悪い!」だけで

叱りつせていたら

この少年のような

本当の美しいものを見極める

強い心が育たなかったのでは

ないでしょうか。

一房の葡萄
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