【感想】娘がお上に浴びせた痛烈な一言とは? 最後の一句 森鴎外著

高瀬舟 山椒大夫最後の一句
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父親が明日、斬罪される事を

知ってしまった

16歳の娘は、それを阻止するため

嘆願書を書く事を決める。

その内容は、父親の代わりに

わたしたち子供を殺してほしい

と言うもの。

この娘の“献身愛“通じて

父親は助かるのでしょうか?

父の代わりに子供たちを殺してください。

子供はもらい子の長太郎以外は

父親の代わりに殺してもらおうと

決めた長女いち。

子供は五人、

長女いち十六歳、二女まつ十四歳

三女とく八歳、初五郎六歳

そして、長太郎十二歳。

みんな、何が起こっている

わからないほど幼子たち。

この子供達を父の代わりの殺して

くださいとしたためた嘆願書を

作ったとて、

お上にそれがわたることですら

困難なことでしょう。

長女いちは二女まつと偶然起きて

しまった長太郎も連れて

奉行所の門で門番に粘りに粘って

嘆願書を渡すことができたのです。

願書を書くのもすごい!内容も!

しかし、これだけでなくそれを

受け取ってくれるまでいくら

追い返されても帰らなかった。

終始一貫、一歩も怯むことなく

突き通していくいち。

まあ自分の命だけではなく

弟妹の命までかけるのですから

相当の覚悟でしょう。

「余程情の剛い娘と見えますな」

最後の一句 森鴎外著

お白洲で母親と子供たちは尋問を受ける

親にも内緒で書いた嘆願書

母親に娘が嘆願書を書いた事を

知っているかと質問されたが

「一向に存じませぬ」と母親にも

相談せずに独断でおこなったことだった。

長女いちは、夜なって嘆願書を書く事を

思いついて、

妹まつに相談して書い始め、

長太郎以外の子供の命を差し上げよう

と考えいたのに

長太郎が気がついてしまい

自分自身で

「他の姉妹と一緒に死にます」と

書いた願書を姉いちが

書いた嘆願書と一緒に提出する。

冷かに刃のように鋭い最後の一句

子供の書いた願書を真に受けて

取り調べている理由は

誰か大人が子供たちに頼んで

情状酌量を狙っているのではと

疑っているため。

お上は

「自分たちの意思で書いたかどうか」を

しつこく確認する。

しかし長女いちは

「いえ、申し上げたことに間違いございません」

とはっきり。

お上は

「誰かに言われたしたことだとばれたら

お前達はすぐに殺されるぞよ。

それでは

父の顔も見ることもできないぞ。」

と言われた時、

いちの痛烈の一言

「お上の事には間違はございますまいから」

自分が殺されても

“父親は解放される“と信じている

と言いたかったのでしょう。

こんな若い娘が

愛する父親を捕らえた相手に向かって

言えるセリフでしょうか?

それを聞いた

お上は「用は済んだ」と言い渡した。

取調の焦点はその献身愛が本物なのかどうか

元文頃の徳川家の役人は

固より「マルチリウム」(献身 殉教)という

洋語も知らず

又当時の辞書には献身と云う訳語も

なかったので

人間の精神に、老若男女の別なく

罪人太郎兵衛の娘に現れたような

作用があることを知らなかったのは

無理もない。

しかし、献身に中に潜む反抗の鋒は

いちと語を交えた佐佐のみではなく

書院にいた役人一同の胸をも刺した。

最後の一句 森鴎外著

まとめます

いちの願いは特赦によって

図らずもその願いは叶うことになった。

父親は大阪より追放のみで

家族は離れ離れになるが

命は助かった。

いちが父親に会うことも叶った。

いちが本当に他の弟妹と

死ぬ気であったかはわからないが

最後のいちの言葉は

ギリギリの駆け引きに勝利する一撃だった。

これは著者の鷗外の自分の冷遇を

嘆いた言葉だったのかもという

解説もある。

私が注目したことは

この時代に“献身“という言葉がなかった

ということ。

この“献身“がもつ狂気と反抗心。

これは、運命のままに流される

運命を愛さずにはいられない

ここ時代には、

新鮮なことだったことでしょう。

最後の一句
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