【感想】禁忌で不可能な恋から永遠の愛を知る 春の雪 三島由紀夫著

春の雪
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同じ相手なのに隔たり(障害)が

できた途端、

それを乗り越えてまでも行きたくなる

というのが厄介な恋の道。

文学作品ながら

少女漫画の様なところもある小説で

うん!うん!と頷き、笑いながら

読んでいるうちに

ラストは切なくてぽろり😢と

させられるそんな作品です。

あらすじ

時代は大正初期

侯爵家の若き嫡子清顕と伯爵家の

美貌の令嬢聡子の悲恋。

お互いの身分もあってる様なので

好きだったらうまくいきそう

なのですが

これがそうはいかない。

お互いのプライドやら

この当時独特のつつしみ深さなどの

ために

二人は結ばれるタイミングを

外してしまう。

それで「まあ仕方がないか〜」とは

ならなかった二人。

秘めた逢瀬へと発展して行きます。

結局、聡子は尼寺に篭り

清顕は悲しみのあまり絶望して

二十歳の若さでこの世を去ってしまいます。

清顕の気持ち

なぜ、こんなことになってしまったのか?

幼い頃、清顕は聡子の家に預けられ

一緒に過ごしていた。

その頃から清顕は聡子のことを

意識はしていたものの

年上の聡子がいつも子供扱いする

ことに憤りを感じていた。

年下でも男の端くれ!

たとえ、聡子が年上でも対等に

扱って欲しいと思っていた。

しかし聡子はいつまで経っても

自分に対して姉の様な

振る舞いを続けるため

清顕はなかなか素直に自分の

気持ちを認めなかったし

聡子のそういう行為が清顕をいつも不安に

させていた。

「私がもし急にいなくなってしまったら

清様、どうなさる?」

(中略)

「いなくなるって、どうして?」

無関心を装いながら不安を孕んだ

この反問こそ、

聡子が欲しがっていたものに

ほかならない。

「申し上げられませんわ、そのわけは」

こうして聡子は、清顕の心のコップに

透明な水の中に一滴の墨汁を

したたらす。

防ぐひまがなかった。

いつもこれだ。

これが彼をして聡子を憎ませるもとに

なるのだ。

春の雪 三島由紀夫著

ゆえに 

聡子が自分のことを好きだと

わかっていてもつっけんどな態度を

撮り続けた。

聡子の気持ち

聡子は清顕が好きなのだが

自分が年上であること

清顕は見目麗しい青年だったので

気後れした感じがあった。

だから、必要以上に清顕を

子供扱いし、教育的な口調で

清顕に接してしまう。

そのことに、清顕がどんなにプライドが

傷つき憤りを感じていたか

聡子にはわからなかった。

雪の場面

清顕は聡子に雪見に行きたいと

言われる。

「なんでやねん!」と思いながらも

今まで、そんなわがままを聡子に

言われたことがなかったので

内心ドキドキで車を

差し向ける。

その車内で

二人は初めて男女の関係を意識した

振る舞いをする。

その時清顕には聡子は無邪気に

雪見をねだる素直な女性に

映った。

聡子はこの時、両親の目を盗んで

清顕に会ったのだが

それほどまでに会いたかったのは

清顕が自分のことを

つっぱねていたのが

偽りの気持ちだったとわかったため

聡子は無邪気に素直に振る舞えて

いたのです。

ゆえに、素直に戯れあうことが

できたのである。

この雪見のシーンは

二人が穏やかで美しい時を過ごせた

唯一の時間だったかもしれません。

しかし、

清顕は男の端くれだったので

それ以降

聡子に会うたびにスキンシップを

求めるが

所構わず行動する

清顕に「子供ね!」と罵ってしまう。

そこで、清顕はまた、憤り

聡子と距離を置き心の平穏を保とう

としていた。

聡子の結婚

こうして清顕に距離を取られた

聡子は皇室に嫁ぐことになる。

そこで、清顕ははっきりと

聡子に恋していることに

確信します。

しかし、遅かった。

当時は皇室との約束は違えることは

できなかった。

結婚が決まりそうになった寸前に

聡子は一生懸命、清顕に連絡を取ろうと

したにもかかわらず、

その時は

清顕は聞く耳を持たず

聡子が家まで来て懇願しても

絶対に会わなかったし

清顕の父は清顕がなんとなく聡子とのことを

好きなのではないかという予感が

あったので

聡子の縁談の話を聞いた時

清顕に「承知できるか?」

「今なら、まだ間に合うから…」と

わざわざ確認してくれていたにも

かかわらず

「関係ないから」と突き放した。

それなのに、正式に結婚が決まった途端

清顕は自分の気持ち「聡子に恋をしている」

ことに気がついたのですから

もう遅いのは明白ですが

ある意味

ここから清顕が求めていた

愛が始まったとも言えるのです。

危険な逢瀬

なんとか、聡子に会いたいのだけれども

今度は聡子か頑なに会ってくれない。

清顕は自分の結婚について相談するために

聡子が送った手紙を盾に

聡子に会わす様にと聡子の侍女に

頼み込み、「一度だけ会わす」

という約束をさせるのだが

清顕は何回あっても手紙を渡さず

聡子も「しょうがない」と言いながら

会ってしまう。

この時の聡子は清顕にとっての

理想の聡子像だった。

訓戒めいた言葉を洩らすゆとりもなく

だだ、無言で泣いているほかない

今の聡子ほど、

彼にとって望ましい姿の聡子は

なかった。

春の雪 三島由紀夫著

いつもみたいに姉風を装っては

自分をあしらってきた余裕の聡子は

今はなく、さめざめと泣くばかりの

美しい女性だったのです。

そして、禁忌や不可能を承知しなからも

自分と会ってくれる聡子に

強烈に惹かれていくのです。

聡子の妊娠

清顕との子供を宿したが宮様との

結婚は避けられません。

密かに堕胎が行われましたが

もう、さすがに清顕とは

会うことはできません。

このことを、聡子や清顕の家族も

知ることとなったためです。

それに、聡子は深く心に傷を負って

しまいます。

寺に篭り宮様との結婚も破棄し

清顕にも頑なに会いません。

それでも、雪の降る中

清顕は寺門にすがるように

聡子との面会を訴えてますが

結局、聡子は清顕に会わず

清顕は血を吐きながら

まもなく亡くなってしまう。

まとめます

清顕も聡子もずっと以前から

お互いを思っていたのに

平穏な結末を迎えることは

できませんでした。

身分がどうとか家柄がどうとか

そんな障害ではなく、また

権力でも金力でもないのです。

二人の思いは破滅的ですが

清顕と聡子では

思いが少し違うように思えます。

聡子は堕胎し宮家との婚姻を破棄し

尼寺髪を剃った時点で潔く

今世での清顕との関係を絶ったのですが

もう、腕の中で融けていった雪を

清顕は自分勝手な幻影を描きながら

実体のないエゴ愛を続けていく。

ゆえに

清顕は今世の愛の結末は死でしか

ありませんでした。

それは、聡子への愛が始まった

時から決まっていたようでした。

清顕の愛は確かに完成度は

高いものです。

傲慢で独りよがりの清様の愛は

無邪気で健気で儚げで思わず

ぽろりと涙が出てしまうのは

私だけでしょうか?

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